親友が絡まれてます。 | ナノ

mission.07


「――…やっぱり、返信こない……」



放課後、教室に残ってスクアーロさんからの返信を待っていた。メールを送ったのは昼休みの時。いつもなら五分か十分程度で返してくれるのだけれど、今回は返事が返ってこない。寝ているのだろうか。それとも、仕事に集中しているのだろうか。……でも、この嫌な感じはなんだろう。考えれば考えるほど、不安でいっぱいになってしまう。



「志奈、ばいばーい!」
「ばいばい!」



日直で残っていた友人達が笑顔で手を振る。私も笑顔で「また明日ね」と手を振る。それを見た友人二人は笑みを浮かべながら帰って行った。気がつけば、外はもう橙色に染まっていた。ああ、もう夕方なのか。



「私も、帰ろっかな……」



ずっと教室に居ても何も変わらない。そうだ、少しだけテニス部を見て行こう。気分転換になるかもしれない。




 ***




凄いなあ、なんて思いながら手塚達の試合を見る。
ギャラリーが少しいる中、私は隅っこのフェンスでテニス部の様子を見る。手塚達レギュラー陣は、人間離れした技を持っている。本当、手塚達はきっと人間じゃない。……先程から目がいってしまう一年の少年。あの子は確か、”越前リョーマ”といって手塚達が中学の時からの後輩らしい。そういえば、手塚に來海のことを聞かれた時、不二とあの少年がいた。



「へえ、二年の平部員より圧倒的に強いんだ」



感心してしまう。きっと、あの少年、越前リョーマは小さい頃からテニスを習ってたのだろう。そうでなければ、身体能力が異常だ。……いや、今も異常か。思わず遠い目をしていると「あんれー? 鬼月さん?」と誰かが私に声をかけてきた。隣を見ると、あの手塚同様人気のある三年の菊丸英二。特に仲が良いわけではないのに、何故話しかけてきたのだろうか。



「手塚から聞いてるよん! 沢田さんの親友なんだよねん!!」



人懐っこい笑顔でそういう菊丸に、「そ、そうだけど……」と少し緊張しながら返事をする。それが一体なんなのだ。



「俺、鬼月さんと話してみたかったんだ!! なんたって手塚が普通に話す女の子だし!!」
「……手塚って、あんま女子と話さないの?」
「うん、免疫ないからさあー」



「ははっ」と笑う菊丸。まるで太陽のような笑顔だ、眩しい。言われてみれば、手塚が女子と話してる所あまり見ない。となると、手塚にと話している私や來海は結構凄いんじゃないだろうか。うん、凄いよね。凄い凄い。



「あと沢田さんと話してみたいなあ。でもでも、なんか気品が溢れてるから話しかけづらいんだよねぇ……」
「ああ、分かる。でも、それ最初だけだよ。話しかけてみれば普通だし」
「へえ、そうなんだ!!」



「じゃあ今度思い切って話してみよーっと!!」なんて張り切って言う菊丸。あなた何歳ですか、なんでそんなに可愛らしいんですか、女の私顔負けですか。自分の女子力について見直すべきか考えていると、菊丸は「んじゃ、もうすぐで休憩終わっちゃうから行くねん!!」と言って背中を向けて行ってしまった。



「あ、が、頑張れ!!」



慌ててそう言うと、菊丸は走りながらも振り返って「ありがとぉー!!」と笑顔でお礼を言ってくれた。ありゃモテるのも分かるな。菊丸がダブルスのペアである大石にちょっかいを出し始めるのを見て、私は「帰ろ」と呟き、テニスコートから離れる。菊丸のおかげで、少し気が晴れた。スクアーロさんのことだ、きっと大丈夫。あれだけ元気だったのだから。きっとまた、元気に上司の愚痴を言っている。うん、そうだ。きっと。
内心ではポジティブなことを言っていても、私は胸元の制服をギュッと握りしめて帰った。

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