「閃ー!!」
夜行本部の宿舎裏手、呼び出した彼が来たので、ひらひらと手を振った。
「なんだよ。」
少したるそうにやって来た彼に、私は言う。
「あたしねー閃のことすっごい好きなの!!付き合って??」
「いーぜ別に。」
Ж噂はすぐに広まった。あの子と影宮君が付き合い出したという噂が。つくづく損な役回り。最近、いや、今回の出来事で本気で自分の能力と性格が嫌になった。私の能力は憑依だ。すごく力が弱いし、戦闘向けではあまりないけど役に立つこともたまにはあるのだ。
そして、この能力に目を付けたのが、周りの女の子達。自分に私を憑依させて変わりに告白させるのだ。
お人よしというか気の弱い私は彼女達の頼みを断ることが出来ず、遂には自分の本命に他人として告白してしまった。そしてそれを
受け入れられてしまい、自爆して今に至る。
1ヶ月たった今もため息が止まらない。
「#name#ーまた頼んでいい??」
縁側でたそがれていた時に声をかけて来たのは見事影宮君の彼女に成れた子。
「どうしたの??」
あなたの悩みなんて私に比べたら些細な物じゃない。一体なんだと言うの??
彼女に呆れながら顔には笑顔を浮かべそう言った。
「閃がね、冷たいの。どうしよう嫌われたかな??」
そんなこと言うわりにそんなに深刻そうじゃない彼女の表情に怒りを少し覚えたけれど、
「わかった。あなたに憑依してそれとなく聞けばいいのね??」
ちゃんと笑顔で返事した。
「いくよ??」
今すぐにというご要望だったので、すぐに彼女に乗り移り影宮君の元へ向かった。
「閃ー。」
案外早く見つかった彼に彼女と全く同じそぶりで近づいた。
「んぁ、なんだよ。」
なんでか屋根の上に居た影宮君。彼女の形をした私が近づくと、彼は言った。
「来いよこっち。」
少し離れて立ってた私に隣に座るよう言った影宮君。おとなしく私が彼の横に座ると、突然影宮君は首に腕を回し彼女を引き寄せた。
なんだ。ラブラブじゃない。心配する必要無いじゃない。そう認識した私は彼女に身体を返した。
元の身体に戻った途端に目頭が熱くなった。視界が滲む。縁側から急いで自室に入り声を殺して泣いた。
神様なんて信じてないけれど、これは貴方が与えた何かの罰ですか??なんで、私じゃなくて彼女なんですか??
Ж翌日、少し腫れた目のままふらふらと宿舎内を歩いて行くと、
「ねぇ、#name#。」
また彼女に声をかけられる。正直もううんざりなんだけど、
「どうしたの??」
それでも笑顔を作り微笑むのをやめれない自分が居る。
「昨日どうやったの??」
「へっ??」
また影宮君が冷たいとかそんな話かと思えば予想外。
「昨日って??」
「あれよ!!閃がいいかんじにきゅって抱きしめてくれたやつ!!」
それを聞いて私は瞬きした。だって私何もしてない。てっきりいつもそんな感じなんだと思ってた。
「もっぺんやって!!」
なのに彼女がそんな無茶振りをしてきて、一応リベンジすることになった。
Ж私的にはラッキーだった。だってこの時だけ私は影宮君の彼女なんだから。
「せーんっ!!」
今日は、廊下で見つけた彼に精一杯彼女に似せたテンションで近寄ると、
影宮君はちらっとこっちを見てからやっぱり昨日のように不意に今度は頭を撫でてくれた。
「閃って気分屋だねー。」
ここで昨日みたく彼女に返さずに、鎌をかけてみた。
「んでだよ。」
「だーってさ、昨日だって急にぎゅってしてくれたと思ったらそれっきりしゃべりもしないで。かと思ったらまた今。」
さっき彼女に聞いた話を元に台詞を紡ぐ。すると、影宮君は
「本気で俺にばれないと思ってる??」
と私の耳元で囁いた。
「え、どしたのー閃んー??」
意味が分からず聞き返すも教えて貰えずとりあえず疲れて来たから彼女に身体を返した。
Ж「おい、」
疲れて来たから自室に戻って仮眠を取っていたら急に起こされて、目を開くと、目の前には
「か、影宮君??」
なんで勝手に私の部屋に??てか何故突然来たの??正直私本人での状態じゃほとんど会話したことない。
「さっきの、意味がわかんねぇって騒いでたろ??気が向いたから教えに来てやったんだよ。」
ピンとさっきの『本気で俺にばれないと思ってる??』のことだとは理解したけど、え、まさか、
「俺の能力知っててやってる??」
やっぱり、憑依してたのばれてる!?でもあの子の為しらばっくれる
「何のこと??」
恥ずかしいのと、ばれちゃ困るから布団から半分ほどだけ顔を出すだけで、表情を彼に見せないよう頑張る。が、突然腕を引っ張られ、布団から引きずり出された。
「俺が憑依してんの気づいてないと思ってるのかっての!!」
そのまま、影宮君に引き寄せられ、身体が触れそうなほどに吐息がかかるほどに近くに座った。
緊張したせいか、頭が回らずにおとなしく首を振った。
「閃ー??」
その時向こうから影宮君を呼ぶ声。影宮君はそれを聞いて舌打ちすると
「たく、空気読めよな修の奴!!」
そう言って、私の頭を引き寄せて口づけをした。
「お前はもう少し欲張れよな。」
そう言い残し、私の腕を離すとすたすたと部屋から出て行ってしまった。
どっち??(貴方が本気で愛してるのは、)
(私だと思っていいのでしょうか。)
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