槿花一日。






08


「きゃあっ!!」「うおっ!!」


医務室からナミさんとチョッパーの声がして、何事かと、医務室に向かう。


「どうしたんですか、ナミさ……、」


扉を開けると、風呂上がりのナミさんと、机で作業してたらしいチョッパー、そして、起き上がり肩で荒い呼吸をするマコ。その目は何処にも焦点が合って無いようで、


「マコ、」


近づきながら声をかければ、びくりとオーバーに反応し、恐る恐るといったようにこちらを振り向く。


「サン、ジ………。」


つぶやくようにそう言って、ゆっくり周りを見回すと、緊張が解けたように、脱力して、そのままベッドに倒れ込んだ。


「だ、大丈夫かお前!!凄い汗だぞ。顔色も悪いし、」


固まってたチョッパーが駆け寄ってきてマコを覗き込む。


「大、丈夫。夢見が、悪かっただけだから………、」


まだ息の整わないマコがそう言って無理矢理笑い、チョッパーの頭を撫でた。


「ハッ、お前まさか寝てないんじゃなくて寝れないのか………??」


息を飲んだチョッパーの言葉に、困ったように、眉間のシワを寄せるマコ。


「おま、なんで……!!」


言わなかったんだ、と言いかけた俺を見て、目で制され口をつぐんだ。


「ここんとこ、寝れないどころか眠気すら来なかったのにさ、サンジと居たらなんか自然と寝付けたから大丈夫かと思ったんだ。ダメだったけど。」


再び起き上がり、へにゃりと笑った顔はやっぱり何処か無理してる顔で、思わず顔をしかめる。


「ねぇ、」


そこに不意にナミさんが、


「ならいっそサンジくんと寝たら??」


なんてことを言うから俺とマコが固まる。


「良いと思わない??チョッパー。」

「そうだな、有りだと思うぞ。そういうのは精神的なもんだからな、サンジと居て安心するならそれ以上ない環境だと思う。」


さらにチョッパーの肯定も加わる。


「じゃ、決まりね。サンジくん仕込み終わった??」

「終わりましたけど、」

「え、仕込みって今何時??」

「終わったならマコちゃん連れて部屋に行く。」

「え、男部屋なんですか!?」

「当然じゃない。」

「だから今何時!?」


3者の言葉が飛び交って収集が着かなくなりかけたとこで、


「それじゃ、わたし寝るから。」


と、ナミさんが、一方的に離脱しそうになる。


「え、いやナミさん!?」


慌てて引き止めようとすれば、


「いい、サンジくん。考えてもみなさい。ここで寝てマコちゃんが寝付けたとするわよ??朝早いサンジくんが起きた後、また同じことの繰り返しじゃない。」


場所を変えてみた方がいいということだろうか、それは確かにそうかもしれないが、と思うも、


「だったら、サンジくんのボンクならサンジくんが起きた後でもごまかしが利くんじゃないかなって思ったのよ。」

「そうだな、サンジの布団サンジの匂いするもんな。」


予想外なとこをつかれ、妙に恥ずかしくなる。ちらっとマコを振り向くと、


「………一理、あるかもしれない、けど、」

「でしょ??わかったらほら、」


さっさといきなさい、と促され、そのまま2人とも医務室から押し出される。


「「………………。」」


扉の前で呆然として、それからマコを見れば同じタイミングでマコもこっちを見て、なんだか笑えた。


「バラティエに居た時も一緒に寝かされてたよなー。」

「違う。あんたが潜り込んで来たんだ。」


そんなことを言いながら、部屋に向かうのに、甲板に出る。外は真っ暗だ。


「そういや今何時。」

「日付越えるか越えないかくらいじゃねぇか??」

「そうか。じゃあ、寝たのは夕方な筈だからそこそこな時間寝れはしたのか。」

「そうだなぁ。」

「じゃあもう大丈夫じゃ、」

「ダーメだ。もっかい寝ろっての。せっかく俺と寝れるってのに。」

「あんたが言うと下心満更に聞こえるんだよね。」

「うるせ。」


そんなこと言いながら、男部屋のドアノブを捻れば、ボンクからはみ出した足が見えたり、いつものことだがなんだか妙な匂いだったり鼾が凄かったり。


「やっぱり医務室のが良くないか??」

「や、慣れてるから大丈夫……だと思う。」


これはレディが寝る環境じゃないだろうと、引き攣った顔でマコを伺うと、苦笑いだったが「宴や野宿の時はこんなもんだ。」と、たいして気にしてない風だった。


「慣れの問題か??」

「あー、うん。多分。」


マコが気にしないなら、と部屋に入る。部屋の明かりは付けなかったから薄暗かったが、「うわ、汚い。」とマコがぼやいた。今度大掃除を強制開催しようと決めた。


「ほら、こっち。」

「ん。」


ボンクの上に呼べば、皆寝てるのをいいことに布団の中に引きずり込むように倒れ込む。


「わ、」


ボンクが揺れるのもお構いなしに抱きしめれば、苦しいと言うように一発顎を小突かれた。痛くないけど。


「お前、加減上手くなったよな。」

「別に加減してる、訳じゃ、な……、」


急にとぎれとぎれになる言葉にマコを見ると落ちてくる瞼と必死に戦ってるようで、


「あぁ、明日でいい。寝ろ。」

「ん…………、」


そう言ったら、俺の服にしがみついて来たから、腕枕してやって頭をポンポンと軽く叩く。するとあっという間に静かな寝息が聞こえてきて、一人微笑むと目を瞑った。




>>NEXT






―――――――

甘甘のべった甘は
書いててにやけてしまうので
非常に困る(笑)





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