槿花一日。








「おめぇそんな本読むのか。」

「マッコーさん。」


本部に近い本屋で、何気なく手に取った本を眺めていたらマッコー少尉に声をかけられた。


「んな小難しい実用書より緑茶すすりながら歴史小説読んでるイメージだったんだが意外だな。」

「どんなイメージですか、それ。」


僕の持つ本を覗き込みながら、マッコー少尉の言葉に笑う。


「いや、だっておめぇ何かジジ臭ぇとこあんじゃねぇか。ガープ中将と茶飲みながら煎餅食ってたりするしよ。」

「美味しいじゃないですか緑茶。まぁ、確かに普段は小説が多いですけど。」


真顔でそんなこと言われてしまう僕ってどうなんだろうか、まだ三十路なんですけどね。と思いながら僕も本の表紙に目を落とす。


「単にヒナちゃんが好きそうな本だなって思っただけです。」


そう続ければ、少尉は納得したような声をあげた。


「プレゼントか何かか??あれ、でも大佐って誕生日もっと先だよな。」

「誕生日じゃないとプレゼントしないって訳じゃないですよ。まぁ、これは違いますけど。」


瞬きをして疑問符を浮かべる少尉に、僕は自嘲気味にクスリと笑う。


「ヒナちゃんが好きそうな本も買って集めてるんです。」


ポカンとした彼に、続けて


「好きな人の好きなものを好きになりたいんです。今でこそ飲んでますけど、前までコーヒーも飲めなかったんですよ、僕。」

「お前、何か健気だな。」



















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