槿花一日。









今日も変わらず満面の笑み。見ていて気が抜けてしょうがない。


「お疲れ様です、ヒナちゃん。緑茶とコーヒーどちらにしますか??」


周辺のパトロールから帰ると、真っ先に駆け寄ってきてシアンはそう言った。腕っ節が弱く、事務を主としている彼は戦闘の可能性の低いパトロールには基本同伴させていない。その間に事務をやらせた方が効率がいいからだ。


「そうね、コーヒー頂戴。」

「……了解です。」


自らの席に座り、そう言えば、いつもと違い歯切れの悪い彼がてくてくと給湯室に向かった。


「………変更、緑茶が良いわ。」

「――!!了解です!!」


言い直した瞬間目を輝かせて、給湯室へ急いだシアン。あれだけわかりやすいのも考えものだわ。と、頬杖をついて、お茶が出て来るまでの間にも雑務にかかった。とはいえ、私がやらなければいけないこと以外はあらかた済んでいるからサッとチェックすればいいだけなのだけれども。


「……こんな仕事に就かなくても引く手数多でしょうに、ヒナ疑問。」


パラリと紙をめくりながら呟いた。


「何か言いました??」


と、そこに本人がひょこりと顔を出す。


「何も。」

「そうですか、では、お茶とお茶菓子こちらに置いておきますね。」


自分のことを言われていただなんて気が付きもしないだろう彼は、にへらと笑ってお茶を置くと、早く飲んでと言わんばかりにニコニコとこちらを見つめる。本当にわかりやすい奴だ。と、軽くため息をついた。


「ため息つく程お疲れですか??」


それに過敏に反応して、オロオロとヒナを心配しだす。そんなにヤワだと思われてるのかしら、ヒナ心外。


「違うわよ。」

「そうですか??」


首を傾げる彼。ひとまず緑茶を一口貰うことにする。


「あら、美味しい。」

「でしょう!?ガープ中将からいいお茶の葉頂いたんです。あ、お茶菓子はおツルさんから頂きました。」


味の感想を言えば、ただでさえ緩んでいた顔を更に緩ませ嬉しそうにシアンは顔を綻ばせた。その光景に何だかデジャヴュを感じて、


「そういえば、この間は後輩の女の子に紅茶とクッキー貰ってたわよね。」


と尋ねる。


「はい、あの紅茶とクッキーも美味しかったですね。」


即答でそう言ったシアン。イマイチ理解できないがこの男、良く食べ物を貰って来るのだ。


「………ヒナ疑問。」

「何がですか??」


こいつに食べ物を与えて何があるというのだろうか。と、シアンを眺めた。そこに、けたたましい扉を乱雑に開ける音。


「シアン!!茶飲んだか??」


ガープ中将だ。特に何の用という訳でもないらしいが。


「頂きました。美味しかったですよ。」

「だろう??」


シアンの回答に満足したのか豪快に彼の頭を混ぜるように撫で回す中将。また、それが何かに被る。


「…………、ヒナ納得。」










もしかして:餌付け

(完全に犬扱いね。)
(ヒナちゃん何か言いました??)
(言え何も。)






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