槿花一日。








「え??エース今日誕生日なの??」


新年を祝う宴が終わり、皆一寝入りして、起きてきて、そわそわしながら会いに行った彼女の口から出た言葉。


「え、知らなかったのかよ。」

「ちょっと!!なんでもっと早く言ってくれなかったのよサッチ!!」


廊下の曲がり角の向こう、曲がればそこに、彼女が居るのだが、


「知らなかったわよ!!エース誕生日だなんて言ってなかったもの!!どうしよう…。」


とてもじゃないけど、今、出ていく気にはならない。


「おいおい、こないだからエースあからさまにそわそわしてたじゃねぇか。」

「嘘!!気付かなかった…、」


引き返すか、と思った時、


「おう!!エース!!誕生日おめっとさん!!」

「ラ、ラクヨウ、あ、ありがとよ。」


なんの悪戯か。大声でラクヨウが声をかけてきて、そのまま流れで曲がり角の先に出てしまったじゃないか。


「あ、お、おおお はよう!!エース。誕生日おめでとう!!」


その先には顔に"私動揺してます"って顔に書いてあるような彼女が居て、無意識にか、2、3歩後ずさられた。地味にショック。


「おーサンキュな。」


それでも、祝ってくれたのには変わりないし、なんだか、彼女が可愛く思えて来て、ぽんぽんと頭を撫でた。


「え、エヘヘ……。」


そんなことを言ってる内に、いつの間にか色んな奴らが、わらわらやって来て、次々になんか寄越したり、祝いの言葉をくれたりするもんで、もみくちゃにされて、気付けば、彼女は居なくなっていた。



Ж




「………、」


昨日は新年を祝う宴で、今日は俺の誕生日祝ってくれて、つくづくありがてぇとは思うんだが、一番祝って欲しい相手が、朝以来俺の前に現れないってどういうことだ。

いや、多分あいつのことだから、出て来にくいんだろうなぁ、なんてこた、予想の範疇なんだが、それでも、


「エース。なーに主役が船縁で一人黄昏れてんのよ。」


なんて、思った時タイミング良く現れるのは、彼女で。


「…………別に。」


明るく笑う彼女に、少しふて腐れてみると、俺の横にやって来た彼女は、背伸びをして、ぽん、と頭に何かを乗せた。


「ん??」

「ふふっ、さてなんでしょう??」


頭に乗ったそれに疑問符を浮かべると悪戯っぽく彼女は笑う。


「見てみて。」


言われるがままに、それを取って見ると、小さな箱で、綺麗にラッピングされたその箱には、


「なっ、」


"HAPPY BIRTHDAY"と書かれたタグが付いていた。


「!?」


明らかに事前に、きちんと用意されていた誕生日プレゼント。


「あっははは!!すっかり騙されちゃって。」

「…………はい??」

「私が、彼氏の誕生日忘れるようなうっかりさんに見えるのかしら。心外だわ。しっかり者のつもりなのに。」


訳が分からずキョトンとした俺に彼女は呆れた風に言う。


「HAPPY BIRTHDAY、エース。」


その台詞の直後、日付が変わったことを告げる、時計の鐘。


「一番最初に祝いたかったんだけどさ、気の効かないパイナップルに横取りされちゃったから、じゃあ一番最後にって思って。」


そう言って微笑む彼女に、つられて俺も笑う。


「なんだよそれー。」

「私、なかなか演技派なのかしらねぇ。あんな猿芝居でまさか騙されるとは……。」

「ったく……、」


彼女の頭を撫でて、額にキスをして、


「お前が祝ってくれんのが一番嬉しいんだから順番なんてどうでもいいのによ。」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。」





per burla



(にしても、よくあんなタイミング良く演技出来たな。)
(んー、なんか見聞色が発現したんじゃないかってマルコ隊長が。)
(マジか!!)
(稽古付けてくれるって。)
(よかったじゃねぇか。)
(これでエースが浮気してもすぐに分かるね。)
(しねぇよバーカ。)





――――――

タイトルは、冗談半分に
という意味のイタリア語です。
ミクロン様のお題
お借りしました。

エース誕生日おめでとう!!
兄ちゃん大好きだ!!


2012エース誕記念



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