槿花一日。








「よぉ。」

「わぁぁ!?あ、お おはようございますエース隊長。」


どーもおはようございます。すっかりエース隊長の保冷剤が板に着いた私です………………………って


そんな訳がない。


今日も心臓に悪いです。


「相変わらずちべてぇなー。」


よっぽど私の低体温がお気に召したのか、隊長は会う度会う度抱き着いてくるので正直いい加減心臓爆発するんじゃないかな、と思う今日この頃です。


「そ、そそ そうですか??」

「おー。」


ちなみに今も絶賛後ろから抱き着かれ中です。誰か助けて。私背が小さいので後ろから抱き着かれたらちょうど隊長のネックレスが頭に当たるんです。地味に痛い。


「おーまたやってんのかよい。」


呆れ顔で向かいから歩いてくるのはマルコ隊長。


「お おおお おはようございますマルコ隊長!!」

「うっす、マルコ。」


ちなみに船員の皆様は、エース隊長の抱き着き癖を"でかい犬に懐かれたと思って諦めろ。"と言ってどうやら助けてくれる気配はありません。


「全く飽きないねい、エース。」

「いーじゃねぇか別に。」

「いやいや、保冷剤テンパりまくってるよい。」

「マルコ隊長まで保冷剤って言わないで下さいよぉぉぉぉ!!」


相変わらずの眠そうな顔でやれやれと言うマルコ隊長。


「え、いいだろ保冷剤。すっげぇいいと思う。最早褒め言葉の次元だ。」

「まじっすかエース隊長。」

「鵜呑みにするなよい。」

「え!?違うんですか!?」


そんなやり取りをしているとマルコ隊長は盛大なため息をついて去って行ってしまう。


「褒め言葉だと思うけどなぁ…。」


そんなマルコ隊長の背中を眺めてまだ真剣な顔をしてエース隊長は言う。


「うーん、正直なとこ微妙ですね。」


ハハハ、と渇いた笑いが出る。


「えー、ほら良く言うだろー、手が冷たい奴は心が暖かいんだって。」


えー、って今言った表情が確実に今幼稚園児だったなんて言ったら怒られそうだから言わないけど、ガキですか隊長、今唇尖らせて拗ねてる感じが可愛すぎますが、


「その理屈で言うとエース隊長物凄い冷酷な人になりますけど。」


なんて今度は普通に笑えば、


「あ、ほんとだ。俺冷酷か??」

「いや、多分違うと思います。隊長は心も身体もあったかいですよ。」


それは盲点だったと言わんばかりの隊長にそう言えば今度は隊長の顎が、頭のてっぺんにのしかかる。


「…………、そうか。」

「そーですよー。」


妙に今、間があったなぁと、エース隊長の様子を伺おうにも顎が乗ってるせいで上を向けない。


「……、そっか。」

「隊長??」

「…………………ん、腹減った。」


心配もつかの間、一気に脱力して転ぶかと思った。隊長はまたあっさり私を離すと"飯ー、飯ー、"と鼻歌を歌いながら食堂へと行ってしまった。なんて自由人!!


「…あれ、今、」


振り返ってみた隊長ね耳が、赤かった気がした。



Ж




「………………。」


モグモグ、ガツガツ。


「………………。」


ガツガツ、モグモグ。


『隊長は心も身体もあったかいですよ。』


モグモ――――――――――、


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「るせぇよい!!エース!!」


ガターンと派手に椅子を蹴り飛ばして立ち上がると、本日遭遇2度目の南国鳥が読み終えたらしい新聞を俺に投げつけた。


「しかも今失礼なこと思ったろい。」

「いや、気のせいだ。」

「南国鳥とか思ったろい。」

「うっわ自分で言いやがった自滅しやがっ「よっし歯ぁ食いしば「すいませんっしたー。」


……南ご、じゃなくてマルコって絶対読心術持ってる。とか思いながら椅子を直して座りなお…


『隊長は心も身体もあったか…』

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「いい加減にしろい!!」


今度は直に拳固が飛んできた。


「ははは、なんだぁ、エース君恋患いかー??」


カウンターの向こうで茶化してきたサッチの言葉に一瞬フリーズする。

コイワズライ??

そして次の瞬間ボッと一気に顔が熱くなった。


「うぇ、ビンゴかよ。」

「見てりゃ分かるだろい。」

「あぁ、カイロと保冷剤の件か。」

「いや、何でお前ら俺より良く知ってるんだ。というか、え、俺、あいつのこと、え、えぇ!?」


再び椅子を蹴り飛ばして立ち上がった。


「今のエースにやかん乗っけたら湯沸きそう。」

「沸くだろうねぃ。」


目の前の二人は凄く愉快そうに、クックックと笑う。


「わ、わ笑うんじゃ、「サッチ隊長ー、」


その笑い声を止めさせようとした途中で乱入してきた話題の彼女。思わず肩が跳ねて、慌てて座る。


「んーなんだい??」

「なんかあったかい飲み物下さいー。」

「オッケーちょっと待ってな。」

「はーい。」


今更になって彼女の方を見れない俺にマルコが遂に噴き出す。


「ん、マルコ隊長なんか面白いことでもあったんですか??」


なんら変わりない調子で今、多分へらへら笑ってんだろうなぁ、と思わしき声がする。


「いや、別に俺は…………。」


好きなんかじゃないと思ってたんだが。別に嫌いじゃないし確かに好きだけど、それはあれだ、単なるLikeであって、


「エース隊長、横失礼しますねー。」


なんて俺が悶々してるのなんて知らない彼女はちんまりと俺の横に座って湯気をあげるマグカップの中身を冷まそうとしている。


「……………、隊長、そこまでガン見されると複雑な気分です。飲み辛いです。」


マグカップの方を向いていた顔が急にぐりん、とこっちを向いて、目が合った。


「え、あ、わ 悪ぃ。」


とっさに、反発する磁石のような勢いで視線を反らす。やばい、言葉が変だし、心拍数がすげー上がってる。


「…、隊長。」

「なんだ。」


出来る限り平静を装って、視線を戻す。と、また目が合った。凄く心臓に悪い気がする。そんなのお構いなしに、彼女は俺をじっと見て、


「やっぱり、隊長顔赤くないですか??そんな格好してるから、風邪でもひいたんじゃ、」


なんて言う。俺はかつてないほどの勢いで目を見開き、サッチとマルコは噴き出した。


「え、ちょっと、マルコ隊長にサッチ隊長、笑うなんて酷くないですか、エース隊長が風邪ひいたかもしれないのに!!」

「「いや、エースは大丈夫だ問題ない。」」

「そ、そんなハモるほど断定ですか!?」

「「あぁ、大丈夫だ問題ない。」」

「…そうですか。ってお二人が決めることじゃなくて!!」


危ない流されるとこだった。とかなんとかぶつくさ言ったかと思いきや、彼女はその冷たい手の平を俺の額に宛がった。瞬間顔の血管が爆発したんじゃないかってくらいに、顔が熱くなる。


「ほら、絶対いつもより熱いですよ!!」

「き、気のせいだろ。」

「気のせいじゃないですって!!」


また挙動不審な俺を余所に彼女は椅子から立ち上がると、


「マルコ隊長も触ってみて下さいよ!!」


と、マルコの腕を掴もうとした。


「エース隊長??」


が、その前に思わず俺がその手を捕らえてしまった。


「……………。」

「ちょっと、隊長??」


なんで自分がそうしたのか訳がわからず、でもなんだか掴んだ手を離す気にもならず、そのまま数秒固まる。


「隊長??エース隊長!?どうしたんですか、そんなにマルコ隊長に触られたくないとかですか??」


どうしたのかは俺が聞きたい。というかこの状況をどうしたらいいのかわからない。ぐるぐる目茶苦茶な頭でとりあえず、彼女を引き寄せていつもやってたみたいに腕の中に納めてみた。


「ちょ、この状況でハグ来ますか!?」


すると、いつもみたいにわたわたする彼女に少し落ち着いた。


「……熱あるなら冷ませばいいかと思って。」

「いや、寝て下さいよ!!」





続・冷え症は辛いよ

辛いのは冷え症だけにあらず。




>>NEXT

―――――――

あれ、話が終わらないぞ←
というかかオチなかった…

どんだけ引っ張んだ冷え症…



次で完結…予定。
あくまで予定←



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