コールド

まさかあの位で倒れるとは流石のバーナビーも思わなかった。

たった三十四度の街をヒーロースーツで走り回っただけで、無様な姿をさらすことになるなんて。
ヒーローになってからはじめての夏はバーナビーが想像していたものよりずっと過酷だったようだ。道理でトレーニング中誰もが戦々恐々としていたわけだ。あまり通気性が良いとはいえないヒーロースーツで外出すればたしかに、中で蒸されて脱水症状をおこしてくださいと言っているようなものだろう。ショーが終わるまでは意地でも平常を装っていたものの、トラックに戻った途端にソファの上。額には冷えたタオルが置かれ、やけに甲斐甲斐しいパートナーがスポーツドリンクを片手に顔をのぞいてくる始末。
顔がやけににやけているのは、嫌がらせのつもりだろうか。

「だから無理すんなっつただろ」
「………きいてません」
「誰だって一回はやるもんだ。ブルーローズは別だったけどな」
「うるさいです」
「可愛くねえなあ」

ああ、うるさい。
睨んでやると、また笑う。後で覚えていろ……。

「バニー、なんか欲しいもんあるか?」
「………みず」
「はいよ」

と、言ってパートナーはなぜかスポーツドリンクを飲んだ。

「あんたなんのつも……」

本気で殺意が芽生えた瞬間、唇に虎徹のキスが降ってきた。
驚いていたら、温くなったスポーツドリンクが口に入ってきて、またそれにも驚いてしまって、飲み込んだ。

「もういいか?」
「もっと……ください」

りょーかい。

子供のように、その人はわらった。




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