「旬平くんって胸大きい子が好きなの?」
私がそう訪ねると彼はお茶とお菓子が乗ったお盆を持った固まってしまった。
「旬平くんって……」
「いやいや、聞こえてる!もっ回言わなくても聞こえてるって」
だって何の反応もなかったんだもん。
お盆をテーブルの上に置き向かい合わせに座る旬平くんの頬は僅かに赤く動揺しているようだ。
「いきなりどしたの?」
「……だって」
言葉にするのは躊躇われたので視線を勉強机の上に移す。私の目線の先には巨乳特集と大きく銘打った、所謂エロ本があった。
先程旬平くんがリビングに下りていった時に何気なく机の上を見ると堂々と置いてあって驚いた。そういうものを見るのが悪いとは思わないけれど、彼女が来る時くらい隠すものじゃないのかな?しかも巨乳特集って。胸が小さい私への嫌がらせにも思えるくらいだ。
「う、わ……!こ、これどこ隠そうか考えてて、そのまま忘れてて……!」
私の視線を辿った旬平くんは、それが何か認識した瞬間に慌てて立ち上がり乱暴に引き出しの中にしまう。
顔は青ざめていて、その仕草や言葉ひとつひとつが高校生の男の子だなと実感する。私も高校を卒業してそれ程経ってはいないのだけれど。
「――変なもの見せてマジごめん」
「別にいいよ、男の子だもん」
決まりが悪そうに向かい合わせに座り直し、頭を下げる彼が可愛い。別に怒ってないのに。
「……巨乳好き?」
「……こだわるね、アンタ」
尚も同じ質問を繰り返す私に旬平くんは困ったように笑う。困るのはきっと、それが本当だから。
「いや、そりゃあ……まぁ男としては大きい方がいいかなぁ、と」
口ごもりながらもそう答える彼。やっぱりか。分かっていても落ち込んでしまう。
「そっか……」
「い、いやいや!そこでそんなテンション下げないでよ」
「だって私胸小さいもん」
私がそう返すと彼は黙ってしまった。そこでの沈黙は肯定と一緒だよ、旬平くん。
「いや、さ。なんつーか、ああいうのは男の夢じゃん?」
「……」
「だから、こう……好きな子はまた別っていうの?そんな感じ」
「えー……わかんない」
巨乳が好きなら彼女も巨乳な方が嬉しいんじゃないの?
旬平くんが慰めてくれているようにしか思えなくて、膝を抱えて下を向く。いじけた子どもみたいだと我ながら思った。
ふと彼の動く気配を感じた。顔を上げればすぐ隣に座る旬平くんの姿。例えばと言いながらその大きな手で私の手を握った。
「俺はあざみちゃんとこうやって手繋ぐだけでも、すげぇドキドキする。変な言い方かもだけど、エロ本なんかよりよっぽど興奮する」
旬平くんも私と一緒なんだ。ドキドキしてるの、私だけじゃないんだ。
「それってやっぱり、好きな子だからなんだよ。特別なの」
分かる?と尋ねるその表情はとても優しいもので、旬平くんの気持ちが伝わってくるようだった。
「――分かる。ありがとう」
「良かった。これでもわかんないとか言われたらどうしようかと思った」
肩口に顔を埋めると抱きしめ返してくれる彼。旬平くんに抱きしめられると、いつも彼がつけている香水の香りに包まれて心地よい。
「……胸のこと、気にしてたの?」
からかうわけでもなく、ふとそう尋ねられると恥ずかしい。女の子なら気にすると思うんだけどな。
無言で頷くと抱きしめる力が強くなった。
「可愛い〜。んなこと気にしなくていいのに」
頭をくしゃくしゃと撫でられる。たまに旬平くんはこうやって私を子ども扱いするんだ。年下のくせに。
「……ね。見せてよ」
「え?」
「アンタがそうやって気にする胸も、全部俺に見せて?」
服の上から胸に手が置かれ、真っ直ぐ見つめてそんなことを言う彼はずるい。
言葉だけを聞けばお願いなのに響きはもっと強さを含んでいて、拒めない。
年下なのに、しっかり男の子。可愛くてかっこよくて、大好きで仕方ない。
小さく頷いた私はきっと耳まで真っ赤だっただろう。
旬平くんの匂いがするベッドに横たえられ、次第に深くなる口付け。意志を持った生き物のように口内を動く彼の舌に私はいつも翻弄されてばかり。真似をして舌を絡めるのが精一杯。
「ん……」
唇が離れる時に旬平くんの顔を見るとこれまでにないほどの男の子の顔をしていた。今まではこのキスで終わりだった。先に進むのだと改めて思った。
「っ……!」
旬平くんの唇が耳に近づいたかと思えば、そのまま舐められた。感じたことのない快感が全身を巡る。嫌ではない寒気が身体を襲う。
「じゅ、旬平くん、それ、やだっ……」
「ん?耳気持ちいいの?」
嫌だと言っても止めてくれない。むしろヒートアップしたみたい。どうしよう、身体の奥が濡れるのが分かってしまった。
「っや、あ……」
やっと解放されて一息つけるかと思えばそんな暇はなくブラウスが捲し上げられ、下着に包まれた胸が露になる。恥ずかしさを感じる間もなくホックが外され、あっという間に上半身を覆うものは何もなくなってしまった。
「旬平くん……」
「……」
何も言わない、動かない彼に不安になる。想像以上に小さくてがっかりした?こんなんじゃ、女としての魅力感じないのかな。
「ど、どうしたの……?」
「え!?あ、ごめん。……あざみちゃんの裸だって思ったら、なんかこう……目、離せなくなった」
照れ笑いを浮かべる旬平くんはそのまま手を私の胸に伸ばした。ふにふにと揉まれると、くすぐったいような変な感覚。
「……柔らかい」
「っ……小さいけど、いいの?」
「うん、可愛い」
ちゅ、っと外気に曝され固くなった突起に口付けられると身体がぴくりと反応する。赤ん坊がするように突起を口に含まれ舌で転がされると今までよりずっと強い快感が押し寄せる。
「あっ、んん……!」
自分のものではないような高い声が出る。猫が甘えるような声が恥ずかしくて唇を噛みしめても、漏れてしまう。
「あざみちゃんの反応、可愛い」
彼の手の中で形を変える膨らみはとてもいやらしい光景だと思った。
「こっちも触っていい?」
黒のミニスカートから覗く太ももの内側の際どいところを撫でながら尋ねられる。怖さもあるけど、それより何より恥ずかしい。
先程から続く愛撫で私は自分の女の部分がどれだけ喜んでいるかを知っていた。
「……ぬ、濡れてて恥ずかしい……」
引かれたら嫌だと勇気を出して打ち明ける。普通の女の子もこんなになっちゃうのかな。カレンたちに聞いてみれば良かった。
「何で恥ずかしいの?気持ちよかったってことじゃん?俺嬉しいよ」
目を合わせて笑いながら短いキスをくれた旬平くんに少し安心する。
スカートと共に下着が下ろされ、裸体が旬平くんの目に曝されより一層の恥ずかしさが襲う。
痛かったら言ってね、と言いながら誰も触れたことのない私の閉じた女の部分を指で割り広げ、長い指が一本中に入ってきた。
「……本当だ。すっげぇ濡れてるね」
「だ、だって旬平くんに触られると気持ちいいんだもん」
たくさん濡れていたためか異物感はあるものの痛みはなかった。旬平くんだから緊張しないでいられるからかな。
「ダメだって、あざみちゃん。こういう時にそういう煽るようなこと言うの禁止ー」
「あっ、やっあ!」
思ったことを言っただけなのに旬平くんには気に入らなかったらしい。指の動くスピードが早くなり、また高い声が漏れる。水音が静かな室内に響く。自分の身体からする音だなんて信じられない。
「痛くない?」
「んっ、ん……大丈夫、痛くない……」
「じゃあ、気持ちいい?」
「えっ……う、うん……気持ち、いい」
恥ずかしいけど、好きな人に触られると気持ちいい。人が人を求める気持ちが分かった。
「……あざみちゃん、俺もう限界」
余裕のなくなってきた表情と共に熱を持った彼のものが私の秘部に押しあてられる。さすがに緊張する。
でも繋がりたいと私も思う。額にキスをすることで返事を返した。
「っ――!」
痛い。苦しい。
先程までの快感が嘘のように、彼が入ってきた途端痛みと苦しさでいっぱいになる。
「痛い、よな。ごめん」
涙でぼやけた旬平くんが心配そうに私を見て頭を撫でてくれた。
「やめる?」
「や、だっ……!」
痛いけど、苦しいけど繋がりたいの。抱き合えることが幸せ。
「――ん。大好きだよ」
それから先のことは頭が真っ白であまり覚えていない。でも余裕のない彼の息遣いと抱き締めてくれる力強さがまだ残っているみたい。
あんなに痛かったのに終わってみれば幸せな気持ちだけが残った。
「旬平くんずるい」
「え、何いきなり」
「いつもよりずっと格好よかった」
密かに憧れていた腕枕をしてもらいながらそう告げる。だって見たことない顔ばっかりするから、ずっとドキドキしちゃった。
「そんなの、あざみちゃんの方がずっと可愛かったって。てか可愛すぎてヤバイ」
「……胸、小さいけど?」
「もー、お前しつこい!」
ぎゅっと抱き締められて頭をぐしゃぐしゃとかき回された。弟とかとこうやってじゃれあってるんだろうなぁ。
「あ、やば……。ごめん」
不意に出てしまった「お前」への謝罪だろう。呼ばれるのは初めてだったけれど、きっとクラスの女の子とかにはそう呼んでるんだろうと思っていたので違和感はなかった。
「別にいいよ。お前でも」
「いや、それはちょっと……まずくない?うん、まずいって。今まで通りアンタでいくから」
なんだ。ドキドキしたのにな。たったひとつの年の差とかいいながら気にしてるのは旬平くんの方だったりする。
「旬平くん」
「んー?」
「大好きだよ」
「……俺も」
巨乳にはなれないけど、ずっとずっと愛してね。
END.
ニーナのキャラがあまりよく掴めてないまま書いてしまいました。ごめんなさい。
ニーナとバンビはすごく可愛いカップルだと思う(´∀`)