4 うっすらと少年のまぶたが開き、瞳が揺らぐのが見えた。視点は定まらず、眩しいのを堪えるように、きつくまぶたは閉じられた。 「……は、なせ! 触わるな人間っ」 少年は、弱々しいながらも抵抗しようとする。サラの腕に当たった手を、きゅ、と優しく握ったら、諦めたように力が抜けていった。 吸血鬼は人間を殺すが、ときには人間に咬みつき仲間に変えてしまう。変化は一方向だが、ごく稀に吸血鬼が人間になってしまうことがある。 人間に変わってしまったら、大抵は生き延びられない。吸血鬼に人間として殺されるか、人間に吸血鬼として殺されるか。 あるいは物好きに拾われ慰みものにされるか。ろくな生き方は望めない。 「あなたを見つけたのが私で良かったわね」 少なくとも、殺すつもりはなかった。そういう意味ではサラも物好きなのかもしれない。 「なに言って……」 自分の置かれた状況が理解できていないのだろう。できても、理解したくないはずだ。 「大丈夫よ、私も群れを外れてしまったの。あなたと同じなのよ」 サラもこの子もひとりぽっち。仲間はいない。 「ちょうど寝室が一つ空いてるの。しばらく居てくれてもかまわないわ」 サラは誰かに傍にいてほしかった。 あわよくば、我が子のように母と慕ってほしかったのだ。 [しおりを挟む] |