1
「ユウリさん!お疲れでした!!」
――西ドイツ超人委員会支部
「あっいうまだったな」
「はい、短い間でしたがお世話になりました」
ユウリは深々と上司に頭を下げた
西ドイツでの仕事も無事終了し、本格的な超人オリンピックの準備のためユウリは日本に帰国する
お世話になったブロッケンJr.には別れの挨拶はしたがとてもそっけないものだった
(でしゃばりすぎて嫌われてしまったかな…)
『仇討ちなんて間違っている』
そう言ったことには後悔はない
しかし、ユウリは胸が痛かった…
「これから日本に帰ってもっと忙しいんじゃないのか?」
上司が心配そうに声をかける
「そうですね、なにせ10万人規模のイベントですから」
「超人嫌いも少しはよくなったか?」
そう上司に言われユウリはバツが悪そうに笑った
西ドイツに来る前ユウリはずっと超人が嫌いだった
ユウリ自身、祖父が超人で超人の血をひいているからというだけで幼い頃いじめにあったり迫害されたりした経験があったからだ
『超人は卓越した力を持っている』
そう言われてはいるが全ての超人が優れた能力を持っているとは限らない
むしろその能力を開花できる超人などほんの一握りだろう
まして祖父はもちろんユウリ自身も容姿も能力も人間と変わらない
それなのに迫害をうけたことがユウリの心を深く傷つけ超人嫌いにさせていた
西ドイツに来た当初、ユウリは超人たちに直接関わる仕事を命じられた
上司はユウリの振舞いからユウリが超人嫌いだということを見抜いていたからだ
「そうですね…昔は正直苦手でした…特に優秀な才能を持つ超人は…」
しかし、たくさんの超人たちとふれるうちに力を持つ超人たちは生まれながらにしてずっと努力を重ねていたのをユウリは知った
その力を弱いものを守るため
超人たちは日々鍛練を重ねていた
仕事とはいえ言葉を交わし仲よくなった超人たちもいる
今は素直にオリンピックを頑張ってほしいと思っている
そしてユウリ自身、オリンピックで超人たちの誇りある闘いぶりを世界中の人々に観てもらい、人間と超人が共存する架け橋になりたいと思うようになっていた
「Alles Gute(お元気で)」
「はい」
上司とユウリは握手を交わす
「あの、ひとつだけ教えてほしいことがあるのですが」
「なんだ?」
ユウリは上司からとある場所を尋ねた
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]