(でゅららら)


「まさおみ、はやくして。おそい」
「おいおい渚、そんなに急がなくても今日1日俺はお前のもんだぜ?」
「ばっかじゃないの?」
「お口が悪い」


年の離れた妹の渚はそれはそれは可愛くみえたが誰に似たのか、確実に俺じゃない誰かに似た渚は性格に若干の難があるようだ。
今も兄の軽いジョークに冷ややかな目を向けて躊躇いもなく馬鹿だと言い放ちやがった。本当に誰に似たんだこの野郎。


「くれーぷ、たべたい」
「え?クレープ?いやその前にナンパし…ってえ!」
「くれーぷたべるの」


くるりと身を翻し俺の脛を確実に決めた渚は駆け足で車で売るクレープ屋へと向かった。ああ、本当痛い…っ!
足だけでなく心も痛いがその辺堪えながら渚へと近づくといつも大してというか全く表情を変えないくせにキラキラとした目で子供にも見易く置かれたメニューボードを見ていた。


「何食いたいんだ?」
「ぜんぶ」
「腹壊すって」
「そのまえにまさおみのおさいふのなかにきたかぜふくね」
「……」


分かってんなら言うなよ、とは口には出さずにポケットから財布を取り出して注文した。


「ほれ、お前イチゴな」
「…ばなながよかった」
「バナナは俺が食べんの」
「ずるい。おとなげない」
「じゃあ渚はもうちょっと子供らしくしなさい」


渚とクレープを1個ずつ持って、渚を抱えて近くのベンチへと座る。抱えている間にもう食べていた渚。本当この子ってば自由すぎ!


「渚がイチゴで俺がバナナにすれば、両方食えんだろー?」
「(モグモグ、ゴックン)…あーん」
「あぁ、はいはい」


口の中のものを飲み込み、こちらに向かって口を開けた渚に持っていたクレープを差し出す。あ、やばい。可愛い。いや女の子はみんな可愛いけどやっべ、渚超可愛い。


「へんなかお」
「ズバッと言うな」
「ん、」


ぐっ、と差し出されたのは渚の持っていたクレープ。これはくれるってことで、食えってことだろうか?


「いらないの?」
「あぁ、食べる食べる。…ん、サンキュ。あ、ああほら、ほっぺにクリームついてるぞ」
「んー…」


イチゴのクレープを一口貰い、渚のほっぺについたクリームを指で取りそのまま舐めた。あっれー?なんだろこの展開つうかこの雰囲気は。


それはまるでイチャイチャデート

(まさおみ、それはんざいなんだってしってる?)
(いや、渚ならいいかも)
(よくねぇよ)





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