王子さまは
春の風に
よく似ている
(マウンドから、ベンチにいるきみまで)
「明日の試合は、絶対負けたくないんだよね。」
明日は、小さな球場でやる本当にふつうの練習試合だった。普段岡野先輩は、こんなふうにはっきりと“負けたくない”なんて口にしないから、少し驚いて顔を上げた。
「絶対勝つから。」
「あ、はい!がんばってください!でも、もう球見えないし、危ないので帰りませんかっ」
「や、あと少し投げてくよ」
野球に一途すぎるんだ、岡野先輩は。こうなると何を言っても聞いてくれないから、わたしはおとなしく見守ることにするの。
「あ、莉理ちゃん、絶対帰ったらだめだから!送ってくから!だからもーちょい付き合って」
ゴメンネ、と笑う。
「見てますから、好きなだけどうぞです!」
送ってくから、だって。じゃあ、ふたりで帰れるんだ。やっぱり、先輩の自主練習に付き合えることがうれしい。
マネージャー、なってよかった。
電灯に照らされたベンチに座って、ずっと岡野先輩を見ていた。しっかりと振り切った腕や、ブレない身体を見ると、どれだけ先輩が野球を好きなのかわかる。だから、見たいの。
バックネットに白球を次々に投げ込んでく。
わたしが男の子だったら、一緒に練習したのになぁ。
それにしても。練習は一時間前に終わった。みんなもう帰ってる。岡野先輩もいつもみんなと帰るのに、どうして?
練習はもう充分なはずなのにな。
「岡野先輩、疲れてないんですか?明日も先輩が先発です」
「ごめん莉理ちゃん、あと少しだけ」
もう、球威は落ちてる。
だから、納得いく球なんて投げられないのに。
「どうして、今日はこんなに……」
「明日、莉理ちゃん誕生日だろ。勝ちたいんだ。」
「っ、どうして」
「いつも、ありがとう。莉理ちゃんがそばで見てくれるからがんばれるんだ。だから、勝ちたい」
ずるいです。
わたしは、わたしが好きだから、自分のためにここにいるだけなのに、先輩はありがとうって言ってくれる。
ずるいのは、きっとわたし。
誕生日、知っててくれて、泣きそうなほどうれしい。その気持ち、先輩が教えてくれた気持ち、伝えたいのに、こわくてできないの。
ずるいわたし。
「莉理ちゃんがいるから、がんばろうと思えるんだよ」
わたしだって、そうなんです。
わたしだって、同じです。
先輩ばかりに言わせたら、だめな気がする。きっと、先輩もわたしも、期待してる。
「明日、勝ったら…言いたいことがあるんです…。」
心臓がすっごいバクバクしてる。
先輩が帽子のつまを下げた。口角が上がってるのが少し見えた。
「絶対勝たなきゃじゃん…」
「か、勝ってもらわなきゃ困ります!」
「応援、してくれる?」
「あたりまえです!ベンチで、ちゃんと見てますから!」
「莉理ちゃんは一生懸命だね」
だって、先輩だもん。
一生懸命に、好きでいたい。
「マウンドからベンチ見ると、莉理ちゃんが近く感じて、それが心強い。」
「明日も、近くにいます……。」
マウンドにいる先輩と目が合う。
遠いようで、すごく近い。岡野先輩との明日を早く迎えたい。
「明日の莉理ちゃんの誕生日、1日俺にちょーだいね!」
はやく、明日にならないかな。
岡野先輩が、好きです。大好きです。
明日はどんな明日になるかな。
わたしの誕生日は、岡野先輩がいるだけで素敵な日になる。
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莉理愛ちゃん誕生日おめでとうございます!
聞いてないけど、お相手は空でよかったよね??(^▽^)←自信満々
莉理愛ちゃんが野球ブーム来たみたいなので空に野球をさせてみました。でも、まとまってない拙い話になってしまった…(´;ω;`)ごめんよ…。
先輩と後輩であり選手とマネの関係でもあり、それ以上なようで、まだ恋人未満…のようなふたりでした。本当、うまく書けなくて申し訳ない.゜(↑ω↑)゜.
だけど愛だけは空と一緒に込めました!
莉理愛ちゃんがすてきな一年を過ごせますように(*^^*)