ダ・カーポ*ハート
音楽室で暁(あき)先生を見かけたのは、誕生日の朝。
なぜかいつもより全然早く起きたから、誰よりも早く校に来行ってしまおうと思っててみると、とても綺麗な音が聴こえてきて、だから、気づけば音楽室に来ていた。
ドアにある小窓から中を覗くと、朝日によって艶かしく光るピアノを、暁先生がひいていた。
綺麗な音。綺麗な姿。
……なんて考えてる自分が恥ずかしくなって、しかも、一番早く学校に来ようと思っていたのに先を越されていて、一言文句でも言おうと思ってドアを開ける。
「朝からなんなんですか、外まで聴こえてますっ」
そう言うと、音色が止んだ。
急に静かになった音楽室に、暁先生わ笑い声が溶けてゆく。
「ははっ」
「な、なんで笑うんですか…?」
「や、朝から元気いーなーと思いまして。」
悪いですか、元気じゃ。
…なんて言わないけどさぁ。なんでまゆ、こんな不機嫌なんだろ。
「はやいね、登校」
「ああ、なんか目覚めてしまって。」
「なんかあるの?今日」
なんか?
予定は、放課後友達と駅前に遊びにいく。でも、それはべつに…。
「や、まぁ…誕生日、がありますね。」
なんか、こう改まって誰かに誕生日を言うなんてあまりないから恥ずかしくなってうつむく。すると、暁先生の低い声が、へぇ、と鳴った。
「それは、大切な“何か”だ。」
「あ、ありがとうございます」
「何かお祝いする。ジュースとか」
「ぷ!ジュースて!」
こどもみたい、と笑うと、暁先生も笑った。うれしそうに。褒めたわけじゃないのに。
「こどもみたいか。まあ、誕生日だし、もう少しちゃんとしたものじゃないとなー。何がいい?」
何がって。
まゆは暁生に何かプレゼントしてもらうほど親しくはないし。
でも、何かリクエストしなきゃ、納得しなそう。
うーん。タダで、重くなくて、暁先生も納得しそうなのって…なんだろ。あ。
「じゃあ…ピアノ、とか」
「え、ピアノ?」
「暁先生、曲作れるって聞いたことあるから…」
さすがに、こんな急には無茶ぶりすぎるか。
そう思って他のものを探していると、暁先生がピアノの前に座った。そしてわたしを見てにこりと笑って、鍵盤に視線を落とした。
……まさか、曲ができたの?まだ1分も経ってないのに?
「いい?」
上目遣いでそう言われ、素直に頷く。
すると、こぼれるように音が響きはじめた。
言葉にできない綺麗な音。
何かに例えて表現することもできない。
忘れないように、ずっと聴いていられるように、耳にとじこめてしまいたい。ー…そんな音だった。
メロディーのエンディングは曖昧で、ずっと続いていくのかもしれない、と思った。
指を止めた暁先生を見つめると、得意げに笑った。
拍手もできないまゆに。
「ま、まゆにはもったいないです、こんな綺麗な曲…」
「どうして?元気で、でも儚げで、この曲はおまえそのものだって、自信あんだけどな」
「バカじゃん!こんな綺麗じゃない!」
生徒に。教師が。
……そんなかっこよくしないでよ。
「綺麗だよ。こんな曲よりずっと」
そんなこと、言わないでよ。
「こんな生まれたての音が、18年生きたひとに敵うわけねーだろ?」
そう言って笑う。
敵わない、その笑顔には、絶対。知ってしまったら、知らなかったころには戻れない。
「暁先生、もっかい聴きたいな。」
「…いいよ。何度でも弾くよ」
暁先生の指先からこぼれ落ちる音を聴きながら、明日から毎朝この時間に学校に来ようと思った。
まゆちゃん!お誕生日おめでとうございましたあああ…アア……(泣いてる)
めっっっちゃ遅れてごめんね(↑ω↑)おん
しかもラブ度少ない話ー!ああああごめんね!でもまゆちゃんのこと大好きなのー!!
暁ちゃん先生と一緒に愛だけはたっぷり込めてます。本当におめでとう。生まれてきてくれて、わたしと出会ってくれてありがとう。
まゆちゃんらぶヾ(´▽`*)ゝ