‐Long Story‐



「麻花ー!」
「あ、お姉ちゃんだ!」
「あー、もうバイバイだね」
「アズちゃんにこれあげる!」
「ありがとー!りんご飴すきなの!」

麻花の手が俺たちから離れて、小さな足は、俺たちの一歩前に進んだ。

「どういたしまして。ありがとう!」
「どういたしまして!」

小さな体を折り畳み丁寧におじぎまでした麻花は、顔を上げて、微笑んだ。

「大きなアズに会えてよかった。またね!」


大きなアズ?またね?
やっぱり変な子だ。

「麻花ちゃんカワイー」

俺はこんなに違和感だらけなのに、アズはのんきに笑ってる。その姿を見てると、麻花の言葉も気にならなくなってきた。

アズはもらったりんご飴に視線を落として、一口ふくんだ。

「げ、あと5分で年明けんじゃん!」
「わあ、ほんと!今年のおわりに里翔といれるなんてうれしい〜!」
「……俺もだよ」


まぁ、アズが迷子にならなかったらもっとちゃんとしたデートできたんだけど。

「来年もよろしくね!里翔」
「おー。アズ、すきだよ」
「わあ!アズも里翔がだいすき!」
「知ってる」
「あは!知られてたかー!」

アズがうれしそうに笑った。

それだけで、俺もうれしい。

「あと2分で明けるよ、里翔」
「あぁ」
「わ!なにこの白いの!」
「……泡雪じゃん」
「雪ー!?雪だあああ!」

すげーはしゃぎ様。
あと2分。…もない。

「雪か、いいな。」
「きれいねー!」
「…キスでもしとく?」

なんとなく、雰囲気的に。
もうすぐ新年。彼女と、雪のなかでふたりきり。

……しないわけないだろ、これ。


「ダメよ!」
「はっ!?」

なんだよ、なんで??

「なんて顔してんの!里翔には麻花ちゃんがいるでしょ!」
「はあ!?」

意味わかんねーよ。

……わかんねーのに、何故だか、泣きそうになって、さみしくて、アズの手を握った。

「……すき。里翔」
「知ってるって、」
「里翔の幸せを祈ってるから」

アズが俺の手を握りしめ、微笑んだ。
すきだと思った。


雪がアズに冠る。

遠くで「1分きった!」と声がした。


「アズがすきだよ」
「わーかってる!」
「ずっと一緒に……」

いような。
そう言おうとしたけど、急に目の前がかすんできた。

「里翔、ねむいよー」
「んー……俺も……」

なんで、こんな急に…


眠気と一緒に、ただ、アズを想う気持ちが込み上げてくるだけ。


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