‐Long Story‐



なんで一緒に並ばなかったんだよ、俺。
アズの性格考えてみろよ。落ち着きないし、すぐどっか行くだろ。見てろよ。そばにいろよ。なにしてんだよ。


新年をふたりで明けなきゃ、意味ねーよ。


「里翔!なにしてんの、ここだよぉ!」
「………」

声のほうに向き直ると、そこにはアズがいた。


「もー、はぐれないでよ、探したじゃん!」

しんじらんねぇ。こいつ、俺を迷子扱いしてやがる。はぐれたのはおまえだろ…!!

「なんてね!実は、里翔よりこの子のお母さんを探していたの!迷子なんだって!」

だから、迷子はおまえだってアズ。

迷子が迷子の手引いてどうすんだよ…。


アズが連れてるのは女の子。小学生くらいだろう。手にはりんご飴を2つ持っていて、そのりんごよりもずっと真っ赤な着物が、なんとなく不釣り合いな印象を受けた。


「…いくつ?」
「8!おにーさんは!?」
「13。名前は?」
「あさか!麻布のアサに花って書いて麻花だよ!」
「かわいー名前だよね、里翔!」
「ん、かわいーかわいー。」
「やったね麻花ちゃん、里翔も一緒に麻花ちゃんのお母さん探してくれるって!」
「ありがとう!里翔!」

呼び捨てかよ。さっきはおにーさんとか言ってたのによ。つーか、デートを迷子に邪魔されるくらいなら夕太に邪魔されたほうがマシだ!

「ほら、里翔も麻花ちゃんの手つないで!」

麻花の左手はアズとつながってる。
ああ、次はアズが離れないように手でも繋いでおこう。それがいいや。

「里翔、手ー」

俺を見上げてにこりと笑う、小さな女の子。
初めて会った感じがしなくて、思わず笑みを返す。

「なんだかこども連れてるみたい!里翔がお父さんでアズがお母さん、麻花ちゃんはこども!」

バカか。

「お母さん!」
「なあに?」
「…麻花、あまりアズをのせないでくれ。本気にしそうだ。」
「そうねー!ちがうもんね!アズちゃんじゃなくてあたしが、アズちゃんのお母さんになるんだもんー」
「……え?」

ふふんと得意げに麻花が微笑む。

「アズちゃんはあたしの世界一の宝物になるの!」

なんなんだこの子、変だ。

「やーん、麻花ちゃんがお母さんなんてアズ幸せ〜!」
「お父さんは里翔だよ!」
「ええー、麻花ちゃん、里翔を好きになったのー?」
「うん!」
「そっか!里翔かっこいいもんね。でも、里翔とケッコンするのはアズだから!」

うわ、おとなげない…

「じゃあアズちゃんはライバルね!あたし、未来ですっごくがんばる!」
「アズも〜!」

不思議なやつら…。
でも、なんだか幸せだ。


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