きみはてぶくろ


(ストロング ストロベリー)


あ、手袋、わすれてきちゃった。
どうりで寒いと思った。スマホいじるのもいやになっちゃうくらいの寒さだよ。

かじかんだ手をこする。

帽子もマフラーもコートもちゃんとしたし、タイツのあとに靴下も履いてるのに、なんで肝心な手袋もわすれちゃったんだろ。

……な、なんでこんな落ち着かないんだ…!?

ややややや、今日は恋人たちのクリスマスで、梅も真奈花も空もキーチもデートだし、クリリンもバイトだし、だから「わたしたちだけくりぼっちかーやだねー」って話になったから…わたしが、そんなこと言っちゃったから…だから、


「わりぃ、遅れた」


っっっ〜!来た!!
顔をあげると、少し息がみだれてる稚嘉がいた。


「や、今来たところだし!あ、でも稚嘉が後ってめずらしいか」

よ、よしよしよし、大丈夫ふつうだ。
そうよ、恋人たちのクリスマスってゆうことに過剰反応しすぎなだけだよ。意識する意味なんてないのに。だって、相手は稚嘉だもん。

くりぼっち同士の、ただの遊び…!


「実姫が早えーんじゃん。どーした?」

「えっ」


た、確かに、わたしがめずらしく早いだけだ。
え、え、え、どーした?って……眠れなかったんだもん。


クリスマスにふたりきりなんて、なんか、デートみたいで。そう思ってしまって、睡眠に集中できなかった………なんて言えない!絶対!


稚嘉はなんにも意識してない。わたしだけが変。いつもとちがう。落ち着かない。わたしだけ。理由もわからないんだから、困った。


「た、楽しみだっただけ!」

「そ。じゃー行くか」

「うん」


なんてゆう言い訳だ。
稚嘉は、なんでもないような顔をして隣をあるきだして、なんだかくやしい。

………どうしちゃったんだろ、わたし。

これじゃ、まるで――――――


「寒くねー?」

「だ、大丈夫…っ」


好きみたいじゃん、こんなの、変だよ…!!

「実姫」

「はい!!なんでしょう!?」

「? あれ、みてかね?」


ほくそ笑みを浮かべて稚嘉が指さしたのは、大きなクリスマスツリーにたくさんの明かりが灯ったイルミネーションだった。

わあっ、すごい!

「うん、近くで見たい!」

今年は誰かとイルミネーションを見たりなんか出来ないと思ってたからうれしいな。


…稚嘉と見れるなんて、思わなかった。

隣の大学に入った稚嘉は、人気がすごいって、かっこいいって、高校でもうわさになってる。
会う機会も、学校がちがくなってからは少なくなってるし、まさか、稚嘉がクリスマスに誘ってくれるなんて思わなかった。


クリスマスの話題をわたしがさみしげに話しちゃったから、気を使って誘ってくれたのかも。稚嘉に彼女がいないのは知ってるけど、きっと色んなひとに誘われたはず。

……なんでわたしと、一緒にいてくれるの?

わたし、うれしくなっちゃうよ……。


「やっぱり、寒い。」

「だなー」

「ツリーはあんなにたくさんの電灯つけてるからきっとあったかいよね、いいな〜!わたし、手袋わすれちゃって。なんでだろー。早くから支度したのに、出るときうっかりしちゃったみたい。」


服にも髪にも化粧にも、かばんの中身まで、すごく長い時間がかかった。

相手は、前まですっぴんでも会えてたひとなのに。

最近じゃ、稚嘉に会うとき、いつも緊張しちゃう。


「わすれたなら早く言えよな」


―――そうなることが最初から決まっていたみたいに、ごく自然な感じだった。

稚嘉の手が、わたしの左手を包んだのは。


「……っ、稚、」

「片方しかあっためらんねーけど、許せよ?」


ゆ、許しますに決まってる…っ!!!


そう思うのに心臓が爆発しそうで、なにも言えない。

だけど、わたしを覗き混むような稚嘉の目は、なんだか不安そうな目をしていて、なんとか今の気持ちを伝えなきゃと思った。


「…………稚嘉……」

名前を呼ぶので限界だ。
稚嘉がどうして手を繋いでくれたかとかもどうでもいいくらい、精一杯。


だってわたし、きっと稚嘉がすきだもん。

いつも誰かを一番に考えることができる、きびしくて優しくて、そんなところがかっこいい稚嘉が。


そんな、人思いな稚嘉だから、わたしがひとりにならないようにクリスマスに誘ってくれたし、イルミネーションも見せてくれたし、手袋をわすれたわたしが寒くないように…手を繋いでくれてる。

きっと稚嘉の中のわたしは“後輩”とか“友達”だから、今は絶対この気持ちを言うことは出来ないけど、いつか、覚悟しててね。

次誰かを好きになったら、素直に、真っ直ぐになるって決めてたんだから。


「………実姫、ちょっと痛い」

「がまんして!寒いの!」


繋いでくれた手をぎゅっと握りしめて、冬のせいで顔を赤くした稚嘉を見上げて、笑った。



******

えーと、冬のせいで赤くなったわけじゃなく、実姫が手を握り返したからです!

最初の文がこんなんですみません(つい)

手を繋いだらそのまま告白しろよwww


クリスマスの(無意識に)友達以上恋人未満なストストの鈍感娘実姫とヘタレ稚嘉でした〜!


拍手ありがとうございました!次は大晦日または元旦に更新予定です。ネタのリクがありましたらメッセからお願いします〜(о´∀`о)
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