やさしくて、


自分がこんなにやきもちを妬くタイプだったんだと、空と付き合ってから知った。


「待って!岡野くんが好きなの!彼女のところなんか行かないで……」
「サクラさん…」

ちょっと…なんで空、自分のこと好きな人を名前で呼んでるの……

わたしとの待ち合わせの場所に、わたしとの時間に、なんでよ…やだ。

空は優しい顔で、空の服の裾を掴む女の人の手を解いた。

「ありがとう。でも、ごめん」
「…そんなに彼女が好き?」
「うん。とても。」

……わかってる、空がわたしを好きなこと。告白もちゃんと断ってくれてることも。

だけど不安だ。
…なにが不安なのかも、わからないのに、空を好きな女の人が嫌いになるくらい。

恋をすれば色んなことが見えてくる。

わたしは今まで恨まれる側だったけど、今は恨む側だ。ばかみたいだけど、止まらない。


信じられないよ…空、好きって気持ちは見えないもん。


「…空」
「あ…梅、ごめん、遅れて」
「いいよもう。もういい…」
「え、梅?」

さっきの人のことも名前で呼んでた。それと同じ口で、声で、わたしを呼ばないでよ…。

「モテる空なんかやだ!」
「え!?」
「もういいよ!わたしなんかよりあの人と付き合いなよ!きっと喜ぶ…――っん、!?」


突然だった。

「ふっ、…!」

言葉を遮るようにふさがれたくちびる。
思考が追いつく前にそれは離れ、見えたのは、空の怒った顔だった。

はじめて見たけど、なんとなく怒ったってわかって、わたしは黙り込んだ。

「言いすぎ、梅」
「く…う、あの…」
「俺だって好きな子にそんなこと言われたら、怒る。悲しい。傷つく。ばか」
「………っ」
「反省して、梅」

空が…怒った。

傷つくって言った。
わたしは空を、傷つけてしまったんだ。


遠ざかる空の背中を見て、今までとは比べものにならないほど不安になった。


きらわれた………

きらわれた……。

空にきらわれた。絶対。だってわたしは空を傷つけた。


あやまらなきゃ。
あやまらなきゃ。

じゃなきゃ離れてしまう。…マヤの、実姫の…みんなのときみたいに。


空がいなくなったら、生きていける気がしない。


「くう…っごめんなさいっ」

遠くなった背中に叫ぶ。
同時に涙がこぼれ落ちた。

霞んだ世界で、空の青い髪が揺れたことだけがわかった。

わたしの髪についた、空の髪の色の星のピン。まるで縛りつけるみたいに、つけたピン。


「っごめんなさい…!」


だけど大事なの。
…空のことが大好きなの。


「梅…」
「空が、あの人のことを下の名前で呼んでたのが、いやで…」
「上の名前だよ。佐倉さんって言って、友達の彼女の友達なんだ」

それだけだよって言ってるみたいだ。

わたしの不安は、空にお見通し。

「…うん」
「やきもち妬きな梅はかわいーよ。でも、もうさっきみたいなことは言わないでほしい。」


悲しそうな目をしてわたしを見る。

泣きたくなった。
傷つけたいわけじゃなかった。

「言わない…だから、お願い……きらわないで…」

空がそばにいなきゃ、わたしはいったいどうなるのだろう。わたしの中にある空の場所は、きっと誰も埋められない、空だけの場所で

わたしはそこに空がいなきゃいやだ。

傷つけちゃ、いけない人。

どんなに嫉妬しても、もう言ってはいけない言葉。


…空はわたしを傷つけたことなんてないから。大事にしてくれてるの、わかるから。


「梅。顔あげて。」
「やっ…泣いてるっ…」
「泣いててもいいから」

顔をあげると、空は微笑んだ。涙をぬぐってくれた。いつもの笑顔じゃないけど、すきだ。


「きらわないよ、絶対」
「っでも傷つけたよ…」
「それでもきらわない。」


空のうでが、わたしを引き寄せてぎゅっと抱きしめた。

やさしくて、あたたかい。安心する。


「梅?やっぱさ……キスもコレも呼び捨ても、てれんね」


空のうでの中で、わたしは大きく頷いた。

おわり

byストロング ストロベリー




初めてのお礼短編は『ストロングストロベリー』の空と梅にしてみました。曖昧な仲直りシーンですが(笑)

本編から1年ほど経って、空は大学1年生。梅は高校2年生の頃の様子です(一応)

梅は絶対に嫉妬深いんだろーなと思いまして。…ちょっとうざったいくらいですが、空はそうゆう子をすごく好きになりそーだなと思いまして。こんな感じになりました…はい。

ふたりのちゅーとかハグのシーン初めて書いたけど、美男美女のちゅー……はなんとも言えない気分になりました。

本編を読んでない方には「なんだよこれ」なお話になってしまい申し訳ありませんでした!


それでは最後に、はくしゅありがとうございました☆

次回はたぶんストストのアンケート1位コンビです。


〜120819

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