A requiem to give to you
- カルマを背負って、歩き出す(1/6) -



アブソーブゲート、入口にて。アルビオールと共にノエルは皆の帰りを待っていた。



(皆、大丈夫かな。さっきから地震も多いし………でも、だからと言って私が中に行っても足手纏いにしかならないよね)



ルーク達と共にこれまで空の旅を支えてきた操縦士であるノエルもまた、仲間の一人だ。彼女と、彼女が操るこの音機関がなければ、どうにも出来なかった事も多かっただろう。

戦闘が出来ないことを悔やむ彼女だが、しかし彼女は彼女にしか出来ない事がある。それこそがアルビオールの操縦であり、そして戦地へと向かった仲間達を暖かく迎えるのもまた、彼女の役目だ。



「先に待っているモノの事を考えると、憂鬱にもなるわね」

「……メルビンさん」



アルビオールの羽の上にいたメルビンの言葉にノエルは声の主を振り返った。



「メルビンさんは、行かなくて良かったんですか?」



本人曰く、生前はそれなりに実力のある譜術士だったらしく、霊魂として縫いぐるみに憑依はしているものの、この状態でなら最低限戦う事は出来るとの事だった。実はここに来るまでの間、メルビン自身も割と行く事に張り切っていたのをノエルは知っていた。

しかし、



「それが、タリスさんとジェイドに止められてしまったのよ」

「ジェイドさんも?」



契約者であるタリスはまだわかるが、ジェイドもとは意外だった。寧ろ彼は使える物は何でも使えの精神でいるのだから、貴重な戦力を野放しにはしないと思っていた。

そう思ってメルビンに問うと、彼女は静かに頷いた。



「ええ。彼曰く「戦えるのでしたら、何かあった時の為にノエルの側についていて下さい」ですって」

「そ、そうだったんですね。……そっか、気を使わせてしまったんですね」



確かにここは環境が決して良いとは言えない。今はいないが、いつどんな強力な魔物が出てくるかもわからないのだから、確かに戦える者が一人でもここにいるのは有り難かった。

しかしメルビンはでもね、と付け加えると苦笑混じりに続けた。



「勿論、貴女の身を案じてってのもあるのだけれど………多分、私自身に戦わせたくなかったのかなって思ったのよね」

「?」

「…………何だかんだで勘の良い子だから。もしかしたら全部お見通しだったのかも、ね」



首を傾げるノエルに構わず、メルビンはそう言うと真っ赤なガラス玉の目を入り口へと向けた。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







その頃、レジウィーダ達はセフィロトの更に奥深い場所で漸くの合流を果たしていた。



「あ、ルー君達だ! おーい!」



最後にここへ来たのはルークとティアだった。先に待っていたレジウィーダがその姿を認めると声を上げ、二人に向けて手を振った。



「俺達が最後だったんだな」

「遅くなってごめんなさい」



謝る二人に仲間達は冗談混じりに揶揄ったり、無事を喜んだりと様々な反応を返す。一通り仲間達からの声がかけ終わってから、ふとルークはタリスを見た。



「それで、タリスの周りにいるのは………なんだ?」



そう言ったルークだったが、恐らく彼自身も答えはわかっているのだろう。彼女の周りには彼自身道中で何度か見かけた石像型のモンスターが数体佇んでいる。モンスターとは言うが、生き物かどうかはかなり怪しい部類に入るコレらは、タリスならば一つ出来そうな事があるのだ。

しかしそれでも敢えて聞いてみた。そんな彼にタリスはニッコリと微笑んだ。



「協力者よ」

「あ、うん」



取り敢えず頷いたルークは、次に彼女と行動を共にしていたであろうグレイを見た。すると彼は面倒臭そうにしながらも口を開く。



「ここに来る途中で襲ってきたゴーレム共をぶっ壊して、タリスがその辺りに彷徨いていた霊魂を突っ込んだンだよ」

「だよなぁ………まぁ、別に良いんだけどさ。ただ、」



圧がすげぇ

そう漏らしたルークに当事者以外の仲間達も皆深く頷いたのだった。それからティアは何かに気が付いたように声を上げた。



「ところで、フィリアムの姿が見えないのだけど」

「それが……どうも先に行ってるっぽいんだよね」



レジウィーダはティアの疑問にそう返す。



「実は先にここに来たのはあたしとジェイド君だったんだけどさ。少し道を戻ったところに崩れた床の残骸っぽいのが落ちてたんだ」

「どうやら彼は一人、私達よりも地下へと落ちたようです。彼の事ですから能力を使って上手く着地したのでしょう」



言葉を引き継いだジェイドもそう言うと、それから険しい顔をして少し奥にあるリフトを見た。



「この先を降りれば、パッセージリングがあるエリアへと出ると思われます。ここまで見知った人物らには一切会わなかったので、もしもいるとすればそこだ」

「つまり、フィリアムは一人でヴァン師匠達の所に行ったってことか!?」



ルークの言葉にジェイドは頷く。それにルークは直ぐにでも駆け出さんとしたが、それを止めたのはグレイだった。



「焦るンじゃねーよ。フィリアムもただ考えなしに突っ込んだわけじゃねェと思う……多分。けど、お前にはまだ先に伝えておかなけりゃいけない事があるンだよ」

「伝える事?」



ルークが問うとグレイはジェイドを見た。ルークとティア以外の者達は既に話を聞いていたようで、ジェイドは二人向かって話し出した。
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