A requiem to give to you- 潮のせせらぎと友愛の歌(2/8) -
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
グランコクマへとタルタロスを発進させて早数日。何の問題もなく帝都のある大陸へと着いたが、流石に自国の戦艦とは言え、両国の緊張状態が高まっている今、港は封鎖されており、やむなく近くの陸地へとタルタロスを停めテオルの森を通過して帝都入りをする事となった。
森に行くまでに何度か盗賊や魔物との戦闘になりはしたものの今のルーク達には大した脅威ともならず、軽くあしらいながらもさして時間もかけずに森の入り口へと到着した。
森の入り口ではマルクト兵がおりジェイドが事情を説明するが、彼を目の前にしてもなお生還を信じられないような顔をしながら確認の為と彼だけ先に帝都へ入る事となった。
ジェイドが戻るまで森の入り口で待ちぼうけをくらう事となったルークたちは周囲の魔物に気をつけつつも、どことなく暇そうに時間を潰していた。
そんな中、タリスがグレイに言った。
「そう言えば、いつの間に大佐さんの封印術を解除したのよ?」
さっきの戦闘で驚いたわ、と言うタリスにルーク達も気になってたのかグレイを見ると、彼はなんて事ないように言った。
「ダアトでヒース達を探すのに手分けした時だ。あの時、部屋に解除に必要な物を取りに行ってたンだよ」
「あー、あの時か。通りで明らかに相性悪そうなジェイドを連れて行った訳だぜ」
納得が行ったようなガイの言葉に、タリスは「でも」と首を傾げる。
「そんな簡単に解除出来る物なの?」
「自力では無理だと思いますよ」
そう答えたのはイオンだった。
「一応、封印術は製造に国家予算の三分の一の費用がかかると言われているだけあって、その性能は確固たる物です。ジェイドでしたら、本来の封印術だったら時間をかければ自力での解除は可能なのかも知れませんが……」
「導師の譜術を抑える為に用意されたレベルの物を自力で解除出来るって言うのもどうなのよ」
「て言うか、国家予算の三分の一って何!? グレイってばそんな物持ち歩いてたの!?」
イオンの見解にタリスはツッコミ、アニスは想像を絶するレベルの金額に目を見開いてグレイを見る。
「普段から持ち歩いてるわけねーだろ。あれは任務を受けた時に作戦上、オレかラルゴが持つって話になったから持ってただけの話だ」
「ついでにちょーっと中身を見てみたくて勝手に弄ったんでしょ」
「そうとも言うな」
「いや、国家予算の三分の一の費用をかけて作った物を弄るなよ」
レジウィーダの嫌味にもあっさりと肯定するグレイにヒースも呆れながらもそう突っ込んだ。
そんな彼らに苦笑を漏らしながらもイオンは話を続けた。
「まぁ、そんな訳でして。解除自体は出来るかと思いますよ。そもそも、かけた側が解除出来ないと不都合も出ますからね」
「ま、そう言うこった」
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
「それにしても、ただ待つのも結構大変ですわね……」
丁度良いサイズの岩を見つけ、腰を下ろしていたナタリアがそうぼやきながら空を見上げた時だった。
「? ねぇ、何か聞こえない?」
タリスが皆にそう問うと、同じく聞こえていたらしい数名も異常な空気を感じて立ち上がった。
「なんか、悲鳴………のような物が聞こえた気が……」
「行ってみましょう!」
言うが早く、ナタリアが弓を手に駆け出した。それにルーク達も慌ててついて行く。
暫く森を駆け抜けて行くと、そこには夥しい量の血を流したマルクト兵が数名、地面に倒れていた。
「しっかりなさい!」
そう言って治癒術をかけるナタリアに倣ってティアとヒースもそれぞれ治療にあたる。
しかし、
「神託の盾の兵士が……くそ、っ」
それが、この兵士の最期の言葉となった。他の兵士たちも既に事切れており、間に合わなかった事にルーク達は悔しそうに拳を握る。
「神託の盾……まさか、兄さん?」
「ヴァン師匠!? もしかして、セフィロトツリーを消滅させようとしてるんじゃ……!」
唇を噛み締めながら言ったティアの言葉にルークも焦りを募らせてそう言うと、それにはイオンが否定した。
「いえ、それはないでしょう。この周辺にはセフィロトはない筈ですから」
「じゃあ、一体彼らは何をしにここに来ているのかしら?」
自分達の邪魔をするにしても、ここはマルクト皇帝のいる場所に最も近い地域だ。こんな所で下手に暴れようものなら国際問題だろう。
そんなタリスの疑問にレジウィーダもうーん、と頭を悩ませた。
「確証はないけど。大詠師がキムラスカについてるから、その辺に関してはあまり気にしてないのかも?」
そう言うとレジウィーダはグレイを向いた。
.