A requiem to give to you- 光と闇の凶戦士(2/5) -
「いずれにしても、アリエッタが真実を知る時は来る。本当の事を知って、あいつがそれでこちらを恨むと言うンなら………その時は」
「その時は………?」
「あいつの望み通り殴り合う。ンで、勝って受け入れさせる」
「ゴリ押しかよ!!!」
思った以上の脳筋解答にルークが全力で突っ込んだ。他の者達もグレイらしからぬその言葉に拍子抜けをしたような顔をしていた。
「単純な奴にごちゃごちゃ言ったって仕方ねーだろ。だったら、獣のルールらしく純粋な力をぶつけた方が理に叶ってる」
「まぁ、確かに野生の動物とかってそう言うところがあるから………ある意味魔物界にも通じそうだよな」
ヒースの言葉に「そう言う事だ」と返す。
「何にしても、まだアリエッタが敵対するとは決まってねェ。六神将相手が三人だとしても四人だとしても、負けたら終わりだ。やり直しなんて効かないんだから、戦うんなら全力で行くしかない」
「そう、だな……」
今は、彼女が直ぐに自分の敵とならない事を祈るしかなかった。
そんなルーク達へ、ノエルからもう直ぐ目的地へと到着すると声が掛けられ、一先ずは話を切り上げて着陸の準備をしたのだった。
*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇
それから十分とかからずにアルビオールはケテルブルクの入り口付近へと着陸した。皆は極寒の地へ降り立つに備えて用意していた外套を身に纏い、アルビオールから降りる。そのまま入口へと歩き進めると、そこには機体の音を聞いて来たのか、既に数名の人々が立っていた。
「え、あれって……」
先頭を歩いていたルークが見えた人達の中の一人を見て足を止めた。
「ルーク、皆ー!」
「タリス!?」
そう、街の入口にいたのはタリスだった。ルーク達を見た彼女は嬉しそうに手を振っており、それに慌てて駆け出す。そして驚愕した。
「タリス! そ、その髪………!?」
「バッサリいってるじゃん!? な、何があったのぉ!?」
ルークとアニスがどこかショックを受けたように声を上げるのも無理はなく、色こそアイスブルーのままだが、あの長かったヴェーブヘアはすっかりと短くなっていたのだ。
後からきたガイやナタリア、ティア達はもちろん、誰よりも一番強い戸惑いを見せたのは…………グレイだった。
「お、お、お…………おま、…………え?」
「タリス」
そんなグレイの隣に来たヒースが彼女を呼ぶと、タリスは「なあに?」と彼を向く。
「君のその髪………
地核に落ちた衝撃で千切れた?」
ドスッ ズシャー……
「オホホ、冗談が過ぎるわ♪」
『…………………』
言うが早く目にも止まらぬ速さでヒースを殴り飛ばし雪へと沈めたタリスは高らかに笑う。それにルーク達は先程とはまた違った意味で何も言えなくなっていた。
しかし、渦中の人物は一頻り笑った後は軽く咳払いをすると改めて仲間達へと向き直る。
「ただの気分転換よ。それよりも、」
待っていたわよ。
そう言ってタリスは笑う。あまりにもいつも通りな彼女のそれに、ルーク達は漸く安堵の息を吐いたのだった。
「お兄さん!」
それから直ぐにネフリーがこちらへとやって来た。彼女は己の兄を見つけると「丁度良かった」と言い、それにジェイドは首を傾げた。
「どうしました?」
「実は………」
そして彼女はジェイド達にサフィールことディストが病院に入院している事を伝えてくれた。聞くに彼はロニール雪山にいたらしいが、大怪我をした状態で街の入口まで運ばれて来たらしい。今は殆ど怪我は治り、最近はレジウィーダ達が見舞いに行ってくれていたらしく食事も取れるようになって来たとの事だった。
「それで、サフィールがお兄さんが来たら自分のところに来るように言っていたのよ」
「ふむ、そうですか。………………」
ジェイドは何かを考えているようで、暫く静かに空を見上げていたかと思えば、やがてネフリーを向き直った。
「ネフリー、私は先に行っていますので、憲兵を病院へ向かわせて下さい」
「……捕まえるのね。わかったわ」
ネフリーは少しだけ悲しそうに頷くと、直ぐにこの場を離れて行った。
「行くのか?」
ルークの問いにジェイドは頷く。
「ええ、このまま相手の数を減らします。それに丁度良い機会ですから、ロニール雪山の事も聞きましょう」
そうしてタリスを伴い、一行はその足で病院へと向かう事になった。その道すがら、タリスとはお互いの今までの経緯を話し合った。まさか地核に落ちた四人が異世界、いや彼女達にとっての故郷とも言える世界へと行っていた事を知り、誰もが驚きを隠せなかった。
「レジウィーダが皆にお土産を持っていくと張り切って荷物を詰めていたから、後で楽しみにしていてね」
「お土産かぁ………超楽しみ♪」
「ええ、異世界の物に触れる機会などありませんでしたから、期待していますわ」
アニスやナタリアは嬉しそうにそう返す。そんな彼女達に言葉にしなくとも同じ考えなのかガイやルークも表情は明るい。
そうこうしながら歩いていると、病院の目の前まで着いた。そしてそこには先客がいた。
「あ、いらっしゃい」
出迎えてくれたのはフィリアムだった。そしてそのすぐ側にはシンクと、何故かクリフの姿まであった。
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