A requiem to give to you
- A score that spells hope・後編(2/10) -



そんなやり取りにアッシュが「くだらない事をしてるんじゃねぇ」と突っ込み、それからジェイドを見た。



「あんたに渡せば、外殻大地降下の手助けになると言っていた」

「成程───流石に、これだけの量を読み込むのには時間がかかりますね。取り敢えず、話は明日でも良いですか?」



ジェイドが本を閉じながら皆を見渡すと、ガイが頷きながら「良いじゃないか?」と言った。



「この中でその本を理解出来そうなのはジェイドぐらいだし」

「そうだな。ジェイド、頼むよ」



ガイの言葉にルークも反対する事なくジェイドに向かってそう言うと、彼も頷いて返した。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







ベルケンドに到着して二日目の夜。昼間のやり取りがあったとは言え、ヴァン達がまだこの街に滞在している可能性がある以上あまり堂々とは出来ないが、仲間達はそれぞれの時間を過ごしていた。

日中にグレイやガイ達と買い出しや荷物の整理、アルビールの調整など各自のやる事を粗方終えたヒースもまた、昼間とは違い幾分か静かになった街並みを一人で歩いていた。

本当ならば今の現状一人で行動するのは良くないのはわかっているのだが、それでも………己を呼ぶ声があるのなら、行くしかなかった。



「………さて、今度は誰が呼んでくれたんだ?」



誰もいない路地に入ってそう呟くと、途端にヒースの目の前で第三音素が急速に集まり出した。そしてバチバチと電気を帯び、目視出来るようになるとそこにはまるでガラス容器のないプラズマボールみたいな存在が現れた。

今まで見てきた音素集合体は曲がりなりにも生き物のような形をしていたのだが、このパターンは初めてである。

取り敢えず挨拶でもしようかと口を開きかけて、それは何かを呟いた。



『繧医¥譚・縺溘?∫焚荳也阜縺ォ菴上∪縺?ュ蝉セ帙h』

「………………」
















正直、何を言っているのかはさっぱりわからなかった。



『遘√?繝エ繧ゥ繝ォ繝医?らャャ荳蛾浹邏?繧キ繝ォ繝輔?逵キ螻』

「………………」

『縺ゥ縺?@縺溘?ゆス墓腐縺ェ縺ォ繧りィ?繧上↑縺?シ』

「えー……………と、ですね……」



(シルフー! 近くにいるなら助けてくれー!)



どうにもならずに思わず進出鬼没で気まぐれな存在に助けを求めると、背後で驚いたような声が上がった。



「うわっ、何だこれ!?」

「!?」



その声に驚いて後ろを振り向くと、そこには己と対峙している謎の存在を見上げるルークと、彼の肩に乗るミュウがいた。



「ルーク……か、吃驚した」

「いや、吃驚したのはこっちだっつーの。何か路地の奥の方で光ってると思って来てみたら、見知った奴がよくわかんねぇモノと向かい合ってんだぜ?」



それで、これは何だよ。

そう問われたが、ヒースも「わからない」と首を振った。



「これが僕を呼んでいたっぽいんだけど……」

『閨悶↑繧狗?縺ョ蜈俄?ヲ窶ヲ』

「え、なんて?」

「この通り、何を言ってるのかがまるでわからないんだ」



謎の存在の言葉にルークが聞き返すのを見て、ヒースも肩を竦めた。



「敵意もないし、似たような存在に今まで会った事があるから敵ではないのはわかるんだけどさ。会話どころか、これじゃ意思疎通がままならなくて困ってたんだ」



見た所、目のような物はあるが表情らしいものもない。話し方も常に淡々としている為感情もわからない。

どうしようかとヒースが溜め息を吐くと、ミュウが謎の存在と彼らを交互に見、そして謎の存在に向けて口を開いた。



「みゅう、みゅみゅみゅみゅう?」

『遘√?蜷阪?繝エ繧ゥ繝ォ繝』

「ミュウ?」



ルークがミュウに問うと、ミュウは二人を振り向いた。



「この人はヴォルトさんと言うですの!」

「ヴォルト?」

「って、お前コイツの言葉がわかるのか!?」



唐突に判明した謎の存在の名を口にするヒースの横でルークがまさかの事実に驚愕の声を上げる。

ミュウはルークの言葉に得意げにお腹のリングを叩いた。



「よくわからないですけど、多分ソーサラーリングのお陰ですの!」

「そ、そう言えばそれって魔物の言葉も翻訳出来たんだったな」

「あー……確かに言ってたね」



全然そんな機会がなかったから忘れていたが、ただ火を吹いたりちょっと浮遊したりする以外も出来る事を以前ルークやタリス達から聞いてい事を思い出した。

ヒースはミュウをルークの肩から下ろして抱えると、ヴォルトを指差した。



「ミュウ、そのまま通訳を続けてもらっても良いか?」

「任せて下さいですの!」



ミュウは元気よく返事をするとヴォルトへ向き直る。



「みゅう、みゅみゅみゅう。みゅみゅみゅぅ?」

『遘√?繧キ繝ォ繝輔?逵キ螻槭?ゅ◎縺薙?蜈峨r謨代≧閠?↓逾晉ヲ上r荳弱∴縺ォ譚・縺』

「みゅみゅ?」

『譌「縺ォ謌代′蜷瑚?驕斐b陦後▲縺ヲ縺?k莠九□』

「みゅみゅうみゅう!」



何だか不思議な絵面である。ルークも複雑そうな顔でそれを見ながらミュウに「なんて言ってるんだ」と問うと、ミュウはこちらを振り返ってヒースに言った。



「えっと、ヴォルトさんはシルフさんの眷属らしいですの! それでヒースさんにシルフさん達と同じように祝福をあげたいって言ってるですの!」

「成程」



確かに今までの集合体の様子から見て要件はそれだろうとは思っていた。そして以前会ったセルシウスがウンディーネの眷属であったように、ヴォルトもまたシルフの眷属であった事にとてもしっくりと来た。
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