The symphony of black wind
- 漣と自鳴琴(2/5) -



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程なくして、ミライ達は何事もなくパルマコスタへと到着した。

大きな港町、パルマコスタ。市場はたくさんの人で溢れ、村から殆ど出た事のなかったロイド達は興味深そうに賑わう街並みを眺めていた。



「じゃあボクは行くよ」

「あぁ、ありがとな」

「気をつけて帰って下さいね」



ミライ達はお礼を言うと、マックスは「そっちも大変な旅みたいだけど頑張って」と笑うとイズールドへと帰っていった。



「……それで、これからどうするんだ?」



マックスを見送り、船が完全に街から離れた時にミライが全員を向いて訊いた。



「教会へ行きましょう」



彼の問いに答えたのはリフィルだった。



「確か、この街の教会には、《再生の書》と言う記録書がある筈よ」

「記録書? 何のだ?」



首を傾げるロイドにコレットが「あのね」と言って説明し出した。



「マーテル教を開いた、最初の神子スピリチュアが行った世界再生の旅の全てを記したものなんだよ」

「一冊だけ作られて、バラクラフ王朝に収められていたんだけど、王朝が滅んだ時に持ち出され、今はこの街の教会に保管されている筈なの」



リフィルがそう言うと、クラトスも続けた。



「パルマコスタは、スピリチュアが最初に先方を行った場所だからな」

「へぇー。皆よく知ってるなぁ〜」

「授業で習ったんだけどね」



呆れたように言うジーニアスにロイドは恥ずかしそうに頬を染めて「そうだっけ?」と頭を掻いた。それにリフィルが顔に手を当てて嘆いたのだった。……と言うか、



「俺も知らなかった」



ミライは明後日の方向を見ながらそう呟いた。すると全員が「え?」と驚いたように彼を振り返った。思えば彼はあまりこの世界の歴史等の勉強はしていなかったのだ。たまに本を読んだりはしていたが、それでも一日の殆どがダイクの手伝いで注文の品を届けに行ったり、狩り等をしていた為にそんな時間は少ない。それに配達で世界のあちらこちらを回っていれば、最低限の知識は身に着いたので、勉強する必要がなかったのだ。













……世界再生の旅に着いて行くと言う事になるまでは。



「そ、そうだよね。ミライは……その、仕方ないって言うか」



ジーニアスがフォローのつもりなのか苦笑しながらそう言った。そんな彼をロイドは「俺の時と極端に反応が違うな」と半眼になって睨んだ。



「大丈夫だよ! これから覚えていけば良いんだよ!」



コレットがそう言うと、リフィルの目がキランと光った。……それにミライは嫌な予感がした。そしてそれは的中した。



「ふふふ、そうだ! これから私がきっちりみっちり教え込んでやろう!! そうすればお前にも遺跡の素晴らしさがわかるだろう!!」

「いや、そこで何で遺跡モード!?」



突然変わったリフィルにロイドのツッコミが入った。しかも気のせいか、話が反れて来ている。ミライは焦ったように両手を前で振った。



「い、いや……それは流石にご遠慮願いt」

「遠慮などするな! 私は教師だ、わかりやすく時間かけてたっぷりと教えてやる! 例えばこの前言った旧トリエット跡はだな……―――」



そうして暫くリフィルの『シルヴァラントの遺跡講座』が続き、最終的にはおよそ400ページ強はあろう『遺跡ドリル』と言う訳のわからない物渡されたミライなのだった。その時彼が「あんな事間違っても言うんじゃなかった」と後悔の涙を流したのは言うまでもない。






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Side:ジーニアス


今、黒いバンダナに黒いエプロンを着けた黒っぽい銀髪をした男がニコニコと営業スマイルを浮かべていた。彼はミライ。ボクの友達で、親友の義兄だ。ミライが笑顔を向ける先にはガラの悪そうな男が二人テーブルに座っており、如何にも怒ってますと言った風に腕を組んで彼を睨みつけていた。

ここまで来ればわかると思うけど、ボク達は今現在バイト中だったりする。


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