A requiem to give to you
- 流るる水に潤う大地(1/11) -


城砦都市セントビナー。この街で新たな旅の仲間を迎えたルーク達はキムラスカへと向かう為、国境であるカイツールを目指し旅立とうとしていた。

……が、しかし



「タリス、お前その格好似合わなさすぎだろ。もう少し何とかなンねーの?」



いざ行かんと宿屋を出ようとした矢先にグレイがタリスの格好を見て言ったこの一言により、もう一日留まる事となってしまった。それからグレイはタリスを引き連れてさっさと買い物に出掛けてしまった。残された者達は特にやる事もなかったので、レジウィーダの提案で近くのカフェへと来ていた。



「まったく……急がなければならないと言うのに」



はぁ、とジェイドが重い溜め息を吐く。それに珍しくルークも同意した。



「ホントだぜ。大体何で今頃になってなんだよ。昨日だって良かったじゃねぇか」

「まぁまぁ」



と、ガイが二人を宥める。



「グレイの言う事もわからなくはないんだし……」



実際に俺達も思っていた事じゃないか。

そう、実際にタリスの格好は違和感だらけなのだ。バチカルにいた時のワンピースのままだし、何よりも現在の髪の色に暖色系はミスマッチすぎる。以前の彼女の髪の色を知らない者からしたらただのナンセンスな人になってしまう。そのくらい、似合わない。

そんなガイの言葉にティアが呆れたように口を開いた。



「けど、いくら恋人だからと言ってあの言い方はないんじゃないかしら」



かなり身も蓋もない言い方だったじゃない。



「それは仕方ないさ。何せグレイだから」

「アイツだもんねー」



肩を竦めながらのヒースの言葉にレジウィーダも苦笑しながら頷いた。



「だから別にタリスも怒ってはなかったっしょ」



だから良いんだよ、と言うとレジウィーダは注文していたパフェをつつき始めた。しかしティアはどこか腑に落ちないようで、そんな彼女にレジウィーダは更に言った。



「それにアレだよ。あの格好のままじゃいざって言う時に動き辛いよ。そうなってくるとまた色々と大変になってくるし、ジェイド君としても今のままでいられるよりは楽で良いじゃない?」

「確かに、彼女も貴重な戦力です。余計な手間をかけさせられるよりは余程マシではありますがね」



そう言うともう一度ジェイドは溜め息を吐いた。それにレジウィーダも「でしょー」と返す。そして、それを最後に会話がなくなり、沈黙が訪れる。響くのはレジウィーダ、そしてヒースが食べているパフェのグラスにスプーンが当たる音と、ルークがジュースを飲む音のみ。






………………。






「……なぁ、」



ふと、ルークがレジウィーダを向いて口を開いた。



「ジェイド、君て………なんだよ」

「ジェイド君はジェイド君、です」



と、レジウィーダは笑う。それにルークは「そうか」とどこか遠くを見ながら返し、言われた当の本人は無言でコーヒーを飲んでいた。しかしその眼鏡の奥は窺う事は出来なかった。

そんな時、漸くタリス達が帰ってきた。



「お待たせ〜…………どうしたの皆?」

「あーいや、別に何でもないよ」



と、ガイが苦笑を漏らしながら答える。それにタリスが首を傾げているとヒースが彼女の後ろにいるグレイを見て口を開いた。



「それでお前は何でそんなに疲れているんだ?」

「これを見りゃわかるだろ」



そう言って彼が示してきたのはその手に抱えていた食材の入った袋だった。どうやらまたタリスの悪い癖(※過去編スキット参照)が出たようで、無駄買いを必死に止めた結果がコレらしい。グレイと同じくらいタリスとの幼馴染み暦の長いヒースは、疲れたように椅子に座ってメニューに目を通し始めた彼に静かに同情した。


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