A requiem to give to you
- スウィーツとヒーロー(1/9) -


よく晴れた朝。気持ちの良い陽気。春も近く、辺りの花々の蕾も大分膨らんできた。そんなセントビナーの街を擦れ違う人々に挨拶をしながら歩いていたレジウィーダはとてもご機嫌だった。



「うーん、良い朝だなぁ。こう言う陽気ってあたし好きだわー。何か良い事ありそうだ」

「おや、レジウィーダちゃんおはよう。今日も元気じゃの」

「あ、マクガヴァンのじっちゃん」



おはよう、と返した相手は老マクガヴァン。グレン・マクガヴァン将軍の父にして、マルクト軍の優秀な元帥の一人だった。しかし今は引退し、街を取り仕切る代表を務めている。そんな肩書きがある人物ではあるが、その心はとても優しく穏やかなで、最初こそ彼女のその紅い髪に驚かれはしたが、直ぐによそ者であるレジウィーダを快く受け入れてくれたのだ。



「今日も何か子供達にお歌を聞かせてくれるのかな?」

「うーん、と……今日は歌じゃなくて、子供達の希望でアビスマンごっこをやろうかと思ってるんです」



そう言うとマクガヴァンは「それは楽しそうじゃな」と笑った。

レジウィーダがこの街に来たのは"ある物"を手に入れる為だった。それはグレン・マクガヴァンが持っていたのだが、この間、何とかソレを譲り受ける事に成功した。いつもなら直ぐに次の目的の為に旅立っている筈なのだが………数週間前、先に旅立ったトゥナロに「面白い事が起こるからここで待ってろ」と言われ"その時"を待つ事になった。だがどうせ待つなら子供達と遊んでようと思い、毎日歌を歌ったり、かくれんぼをしたり、鬼ごっこをしたりしながら過ごしていたのだ。



(てか、その面白い事って何なんだろ?)



トゥナロ曰く、レジウィーダ本人がその面白い事を起こしたくなるような事が起きるらしいのだが、彼女にはさっぱり意味がわからなかった。老マクガヴァンと別れ、この街の象徴とも言われるソイルの樹の近くに来たレジウィーダはうーん、と考えるがやはり答えは出ず、頭を悩ませた。



(あれから結構経つけど、ホントに起きるのかなぁ)



そんな事を思っていると、不意に何かに足を躓かせた。



「え………うわっ!?」



そのまま転び、顔面を強打する。これはすごく痛い。



「うごぅあ゙あ゙………い゙だい゙〜〜〜〜〜」



と、女としてどうかとも思う声を上げながら鼻を押さえて起きあがり、自分が躓いたモノを振り返る。















そして固まった。



「え…………?」



痛みなんて吹っ飛ぶくらいの衝撃だった。それは実に二年振りとも言える程長い間見ていなかった姿で、彼女が目的の合間にもずっと探していた人物の一人だった。そんな"彼"が今、目の前でうつ伏せになって倒れている。



「い、生きてるよな?」



取り敢えずひっくり返して生死の確認。気絶はしているようだが、心拍、呼吸は共に安定。怪我も見当たらない。どうやら無事のようだ……と、言うよりこれは寧ろ寝ている、の方が正しいのかも知れない。



「……………よし、」



と、意味もなく意気込むと、彼を担ぎ上げる。その際に彼がよく身に付けていた備品を探したが、見つからないようなので直ぐに諦めた。



「とにかく宿屋に連れてこうっと」



そう言って一人呟くと、どこか嬉しそうに元来た道を歩き出した。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







その頃、ルーク達はセントビナーへの道中で魔物と出会(でくわ)していた。



「ルーク! そっちへ行ったぞ!」

「わかってる! 喰らえっ!!」



双牙斬を妙に触手が気持ちの悪い魔物、グリーンローパーに当てる。すると上手い事急所を突き、一撃で倒す事が出来た


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