A requiem to give to you
- 国境の砦(2/11) -



「……………」



そうこうしている内にルーク達の会話は続いていたらしく、アニスはルークに心配された事が嬉しかったのか頬を染めて体をくねらせていた。



「そうなんですぅ。アニス、ちょっと怖かった。てへへv」

「そうですよね」



うんうん、と頷きながらイオンは両手をグーにして突き出しながら言った。



「アニス、『ヤローてめーぶっ殺す!!』って悲鳴を上げてましたものね」

「あら、それなら私も聞いたわねぇ」



イオンの言葉にタリスも笑いながら同意した。



(てか、もうそれ悲鳴じゃないよなー)

「もう、イオン様とタリスは黙ってて下さい〜!」



ムッとしながらアニスはルークから離れて文句を言うと、二人は声を上げて笑ったのだった。



「アニスって子、いつもこうなのか?」

「ここまでぶりっ子全開の方が珍しいくれェだな」



ヒースが声を潜めながらグレイに問えば、彼は詰まらなさそうにそう返した。しかしその会話が聞こえたらしくアニスはルークには見えないように二人をギッと睨みつけた。



「ちょっとグレイ〜。余計な事を言わないでくださーい………………って、えええっ!?」



再びドスの利いた声で話したかと思えば、途端にグレイの姿を見て絶叫した。



「な、なな何でグレイがいるの!?」

「それって今更だよな」

「コイツねー、今ジェイド君の捕虜と言う名のイオン君の奴隷なんよ」



アニスの言葉に何でもない風に返すグレイを押し退け、彼女の小さな体を抱き締めながらレジウィーダがそう言うと直ぐ様本人から訂正が入った。



「勝手に奴隷にすンじゃねーよ馬鹿女。一時的な護衛だっての」

「そ、それはわかったけど〜……ジェイド"君"って……」



ジェイドに捕まった、と言う点で何となく納得はしたみたいだが、アニスは恐る恐るジェイドを見ては己に引っ付くレジウィーダを勇者だと思った(らしい)。



「大佐」



そんな彼女達のやり取りを余所にティアが冷静にジェイドに声を掛けていた。



「私とルーク、それにタリスも旅券がありません」

「そう言えばそうでしたね。……どうしましょうか」



顎に手を当てて思案するジェイド達をアニスに引き剥がされながら見ていると、途端に覚えのある怒声が響いた。



「ここで死ぬ奴にそんな物はいらねぇよ!!」



声の主はそう言うと同時にルークに向かって剣を振り下ろした。ルークは小さく悲鳴を上げながら後ろに転び、運良くもギリギリでその攻撃を避けた。しかし襲撃者は更なる追撃をするべくひっくり返ったルークに再び剣を振り上げて駆け出す。



「喰らいやがれ!!」

「ちょっち待てやこのバカッシュ!!」



と、叫びながら何とか二人の間に滑り込むと、襲撃者こと上司(元?)……アッシュは目を見開いて足を止めた。そして彼はレジウィーダが予想している通りの質問を投げかけた。



「てめぇ、何故ここに!?」

「そんな事は今はどうでも良いだろ。それより君、一体どうしたってんだよ。保留にするんじゃなかったのか?」

「うるせぇっ! こんな屑、さっさと死んだ方が良いんだよ!」



そのあんまりな言い方にこちらも思わずムッとなる。



「またそんな事言いやがって………ルークはあたしの友達だ。だからそれには反対だね。それに、こんな所で事を荒立てるのは君としても拙いんでないかい?」



色々と、と付け加えると彼に微かに動揺が走ったのがわかった。その時、第三者が割って入ってきた。



「レジウィーダの言う通りだ。剣を下げろ、アッシュ」



それはルークの師であり、六神将を束ねるヴァン・グランツ謡将だった。


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