A requiem to give to you
- 緑の少年たち(2/8) -



レジウィーダがその"例の裏技"とやらでマナを使いこなしたのはわかった。前々から自分にしか扱えない筈の"鍵"を(ほぼ力業で)勝手に弄くったりしていたことからそれによる偏見はない。

しかし……しかし、だ。それがそんな規模のデカイものだなんて誰が思うだろう。精々、例えるならばちょっと霊感が強くてちょーっと(←ここ重要)邪気を祓える力を持つ祈祷師や占い師のようなものだと思うのが限界だろう。……それでも世間一般の考えから五十歩ほど譲った考えだが。



「お前、その例の裏技って先天的なもんなのか?」

「さぁ? 少なくとも出来る事に気が付いたのは初めて異世界に渡った時だったよ」



そう言えばそうだ。正直、あまり確かな事は覚えてはいないが、レジウィーダがその"例の裏技"だなんだと口にしたり、やたらと"鍵"を触りたがるようになったのもその時辺りからだった……気がする。

そう、そしてそれは……
















鍵と共にある特別な"守り石"を貰った時だった。




















ん? 守り石…………?



















そう言えば携帯に付けといたアレ、どうしたっけ? つーか、そもそも携帯自体どこやった…………??



















「……何、してんの?」



訝しむようにレジウィーダが訊いてくるが、グレイは構わず確認するかのように自分の身体をペタペタと触っていた。しかし途端にピタリと止まると、次第に彼の表情が青くなっていった。



「う……





















ウソだろぉぉおぉおおぉっ!!?」



この世の終わりのような顔をしたグレイの絶叫が狭い武器庫に木霊した。



「ちょっと、煩いんだけど」



突然レジウィーダでもグレイでもない、第三者のそんな声が聞こえてきた。二人は声のした入口の方を見ると、そこには仮面を着けた少年が不機嫌そうに口許を曲げて立っていた。



「アンタ達がいつまで経っても来ないから、リグレットが呼んでこいとか言……────って、うわっ!?」



少年が全てを言い切る前にレジウィーダが突然彼に抱き着き、それを遮った。



「シンクーーーーーーっ!! マジ会いたかった久し振り!!」

「なっ、いきなり何だよアンタ!? いたっ、痛い痛い痛い!! ホント、締まる………っ」



パタリ…



「あ、シンク? え、ちょ……おーい! 戻ってこーい!」



グッタリと動かなくなったシンクをガクガクと揺らすレジウィーダ。寧ろそれは逆効果なのでは?とグレイは思わずにはいられなかった。それにこのままでは流石に可哀想だと思い、取り敢えず止めることにした。



「やめろし」



ボカッと軽く鈍い音を立ち、漸くレジウィーダはシンクから離れた。



「いったぁー……。女の子ぶつなんて最低だ」

「女扱いされてェなら、もっとそれらしくしたらどうだ?」



ったく、と不貞腐れるレジウィーダに溜め息を吐くと、シンクを振り返った。



「生きてっか?」

「……なんとかね」



どことなく(いや確実に)怒っているのだろう彼の声は地を這うようなものだった。そしてそのままレジウィーダを向くと、先程から気になっていたことを問い掛けた。



「……それにしてもアンタ、よくボクのことがわかったね」



一応、正体は隠していたつもりなのに。そう言って少しずらした仮面の下には、レジウィーダがついこの間会ったばかりの少年と同じ顔があった。


.
/
<< Back
- ナノ -