A requiem to give to you
- 魔王サマの狂想曲(2/10) -



「それでは早速街に行きましょう。そろそろお昼ですし、僕お腹空いたなぁ」

「アリエッタも空きました」

「最近、チーグル製菓新作のお菓子も出たみたいだし……是非とも行かないと」

「です!」



………って、あれ? コレってもしかしてもしかしなくても……



「あたしが奢る系なノリ?」

「「勿論です♪」」



マジかっ、と驚くレジウィーダにイオンは近付き瞳を潤ませて言った。



「ダメ……なんですか?」
















金と時間 > 可愛い子たち
















金と時間 <<<<< (越えられない壁) <<<<< 可愛い子たち
















ずきゅーん
















「よっしゃー! こうなりゃチンクル製菓でもお昼でもドンと来いや! 可愛い子ちゃんの頼みだもんね!」



と、あっさりと傾いてしまった。イオンはそんな彼女に両手をパンッと叩いて微笑んだ。



「良かったぁ。もしこれで断っていたら…………先程の不敬を出しに憲兵に突き出していた所ですよ」



耳元で囁かれた最後の方の言葉に背筋が寒くなった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「あぁ……自分のこの性格が憎らしい」



殆ど空っぽになってしまった財布を開き、溜め息を吐くレジウィーダ。チラリとイオンらを見ると、ベンチに座って満足そうな顔でチーグル製菓と書かれた袋を片手にアイスクリームを舐めていた。



「うーん、食べた。美味しかったねアリエッタ」

「はいです。アリエッタ、たくさんたくさん食べました!」



あー……可愛いなぁ。

幸せそうに笑い合う二人にだらしなく緩みそうになる表情を必死に堪えながらレジウィーダはそんな事を考えていたが、ふと肩の力を抜くと苦笑した。



(ま、喜んでくれたんなら良かったんだけどね)

「レジウィーダ殿」



ふとイオンに呼ばれ、そちらを振り向くと手招きをされる。いつの間にか彼の側にいた筈のアリエッタは少し離れた所でライガと一緒に蝶を追い掛けながら戯れていた。



「何ですか?」



彼の隣に腰掛けてそう問うと、イオンは残りのコーンの先っぽの部分を一口で食べてからレジウィーダを向いた。



「貴女のいた世界の事を教えてもらおうかな、と」



それにレジウィーダは目を見開いた。



「何で、それを……」



思った事をそのまま口にすればイオンはレジウィーダが教会前で落とした入団許可証を取り出した。



「これの許可を貰いに来たヴァンから聞きました」

(あのヤロウ……何バラしとるんじゃい)



それを聞いたレジウィーダはここにはいない首席総長を恨めしく思った。イオンはそんな彼女に構わず、子供らしい好奇心に満ちた瞳でレジウィーダを見てきた。



「あの時はあまり詳しい話は聞けなかったので、この機会に是非お話を伺いたかったんです」



真っ直ぐに見つめてくるその様子は先程脅してきた時や、その前の教会前で初めて見かけた時とはまるで別人のようだった。場所によって使い分けているのだろう。しかし僅か12歳にしてここまで完璧に自分の"出し方"を変えられる彼は伊達に教団のトップには立っていない、とレジウィーダは密かに思った。

今のこの姿でさえ本当の姿なのかは些かわからない。全て本当なのか、或いは全て嘘なのか。ただ間違いないのは、今自分に向けられている素直な好奇心とその奥に秘めた思いは本物だと言う事だった。


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