A requiem to give to you
- The white departure(2/11) -


そもそも何故彼は突然剣の練習など始めたのか。そう問われれば彼はきっとこう答えるだろう。



『備えあれば憂いなし』



街の外がどんな感じであったかはこの間のでよくわかった。道や森にはモンスターが徘徊し、その時は見かけなかったが稀に盗賊やなんかも出没して旅人を襲うのだと言う。あの時はガイやヴァンなどの実力者が側にいたから、特にそう言った者達に襲われる事もなく無事に帰って来れた。しかしこれが一人ないしタリスとヒース二人だけだったならどうだ。きっと無事では済まないだろう。また前回みたいに突然邸に侵入され、襲われた時にも対処できるように、力を付けておいて損はない。それに……



「タリス」

「何かしらヒース?」



いつの間にか窓際まで来ていたヒースが話し掛けてきた。先程まで隣にいたルークはガイと剣の稽古を始めている。



「明日、シェリダンに行く事になった」



シェリダン、とは確かキムラスカ領にある街の一つだ。譜業技術に特に力を入れているこの国にとって、とても大切な拠点となる街……だったと思う。



「ガイさんが休暇を取ってくれてね。譜業技術の最高峰であるあの街を案内してくれる事になったんだ」

「あ、そう……」



やはりそんな所だろうとは思っていた。と言うか、外に出るのならもっとやる事があるのでは……、と思うタリスの思考を読んだのか、ヒースは「それと」と言って続けた。



「それが終わったらベルケンドと言う街に行って、検査を受けてくる」



タリスが譜術を使う事もそうだが、それ以前に幽霊を人形に憑依させて使役したり、ヒースのように風と同化したりすると言うのはこの世界の常識においても普通とは言い難いらしい。この世界の常識でこれなのだ。元々こう言った事とは殆ど縁がないヒース(タリスは何とも言えない)にとってはもう最早夢なんじゃないかとも言える領域だった。



「それにこの世界に来てから全く背が伸びてない。この原因も一緒に調べてくる」

「それは単に貴方の成長期が終わったからjy……」

「黙らっしゃい。てか、寧ろこれからだっての」



これで止まるとかふざけた事あるかっ、と憤慨するヒースにタリスは「冗談よ」と肩を竦めた。



「それは私も気になっていた事だし、丁度良いわ」



良い報告を待ってるわね、と言うと今度はヒースが肩を竦ませた。



「良い結果も何もないと思うけどね…………ん?」

「あら……」



ヒースが何かに気付き、空を見上げるのを追うようにして顔を向けると、白い物が降ってきた。



「お、雪だ。珍しいな」

「雪!? これが……」



雪に気付いたガイ達も手を止めて空を見上げた。ルークは初めて見たのか、興味津々で手を伸ばして雪を掴もうとしていた。



「雪、ねぇ」



積もったら沢山雪遊びを教えてあげなきゃねぇ、と今にもはしゃぎ出しそうなルークを見てタリスは静かに笑った。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







約束しろ! 必……って…いよ! そしたらお前に………が……

『うん。わかってる。……わかってるよ。約束する』






何で…は…を………いんだ?

『だって、君が知りたいと思ってやっている事でしょ。それを止める理由はないよ』


どうして……何故なんだ………は……

『…………。自分を責めないで。悲しまないで……笑って……』



宙…………













宙……







「……宙」


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