A requiem to give to you
- 皇帝陛下の心情(2/2) -



ジェイドの呼んだ兵士に連れられ、カーティス邸から城へと向かう道中。連れ出された時とは打って変わって大人しく歩くピオニーは顎に手を当てて考えていた。



(あのジェイドがあそこまで気を許すなんてどんな奴かと思ったが……まさかアイツだったとはなぁ)



昔、雪国にいた頃によく遊んだ年上の少女……と、よく似た存在。ピオニー自身は人伝に聞いていただけだが、彼の少女は嘗て己らが尊敬していた師と共に亡くなったと聞いていた。その為、ジェイドから事前にある程度事情は聞いていたとは言え、初めて見た時は化けて出たか、もしくは誰かが彼女のレプリカを作ったのではないかと目を疑ったものだ。

ただ彼女のレプリカが作られただけならば、あのジェイドがここまで気を許すなんて事はなく、寧ろ見た瞬間にその手で消していた事だろう。しかし彼女の話をする彼の表情は、まるで大切な宝物でも見つけたかのように、実妹にすら見せたことがないような優しさを帯びていて、己を含め何名かの家臣らを震撼させていたのはここだけの話だった。

あの気難しい幼馴染みの馬鹿げた研究と考え方を変えるのにとてつもない時間と苦労をかけた。そんな彼をいとも簡単に揺り動かす彼女が一体何なのか、確かめたくなった。

本当に自分の知る少女なのか、それともよく似た存在が大切な幼馴染みを上手く手駒にとっているだけなのか。

……結果として、恐らくは十中八九本物であろうとピオニーの中での結論が出たことでこの話は終了した。相変わらず性格の悪いことに、ジェイドはこちらの話が終わるタイミングを見計らって追い出しにかかられ、今こうして城に戻されているのは非常に遺憾だが。



(しかし、アイツこれからどうするつもりなのかねぇ……?)



ジェイド自身が少女……レジウィーダをどう言った感情で見ているのかは正直分かりかねている。

今でこそ親子ほどの歳が離れている彼女に対するその気の許しは果たして何から来るモノなのか。

恋愛、友愛、罪悪感………それとも別の何かか?

仮に前者だったとして、別に彼を否定しようとは思わないし、もしそうであるのならピオニー自身も大いに歓迎も祝いもする事だろう。



(ま、何にしてもアイツ自身が何かを大切に出来る心が持てたって事を、今は喜ぶべきか)



小さく口角を上げ、気分が向上するピオニーにその様子を見守っていた兵士たちは顔を見合わせていたが、それを彼の知る由はなかった。







END
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