A requiem to give to you
- キッカケの話(2/6) -



忘年某日。とある小学校にて。



「終わったぁー! 放課後だーい♪」



今日の授業も無事に終わり、待ちに待った放課後。子供達は皆思い思いの時間を過ごす。
宙もまたその一人で、ようやく来た自由な時間をどう過ごそうかと伸びをしながら考え、そして近くにいた友人達に話しかけた。



「皆はこれからどうする?」



それに真っ先に反応したのは涙子だった。



「そうねぇ……。今日は家庭教師もないし、良ければみんなと遊びたいわ」

「そっか! わたしは全然時間あるよ!」

「ふふ、決まりね」



快く返事をすると涙子も頷いて返した。それから他の二人の友人を振り返る。



「あなた達は?」



涙子がそう訊くと、二人の内の一人……聖はよく聞いたと言わんばかりに怪しい笑みを浮かべた。



「僕達は昨日買ったゲームをやるんだ」

「ゲーム?」



はて、昨日は何か特別に発売の物でもあっただろうかと宙が首を傾げていると、残りのもう一人が補足を入れた。



「パソコンでやるネトゲだよ。MMOって聞いたことくらいあンだろ?」

「たくさんの人と出来るゲームだったわね。よくCMでも見るわ」



私もちょっと興味があったのよねぇ、と涙子が思い出すように言う。



「この間のテストを頑張ったからご褒美にってパソコンを買ってもらったからさ。折角だし一緒にやろうって事になったんだよね」

「そうなんだ。それって面白いの?」



ゲームについてはそれ程詳しい訳ではない宙がそう問うと、聖は力強く頷いた。



「そりゃ勿論。好きにカスタマイズ出来る見た目。カッコイイ装備。皆で力を合わせて挑戦する楽しみ! これが家にいても誰とでも出来るんだ。年齢も性別も関係なく楽しめるってのがこう言ったゲームの売りだよね」

「な、なるほど?」



いつになく高めのテンションで捲し立てられ、少し引き気味の宙。普段とは実に逆の光景だったが、好きな事に関しては割と通常運転なので誰も突っ込む者はいなかった。

聖の話ですっかりと興味を持ったのが涙子だった。



「面白そうねぇ。確か家にもノートがあったからやってみようかしら」

「ンじゃ、これから家に集まるか?」



そう提案したのは陸也だった。



「今日は親も遅いから、多少は騒げるぜ。どの道聖は来る予定だったし、お前もやり方わかんねーと思うから、今ならば教えるぜ…………聖がな」

「その流れで僕に振るのかよ」



思わず聖が突っ込むが、陸也はどこ吹く風だった。しかしその提案に涙子は「良いわね!」と両手を叩いた。



「じゃあ、私もノート持っていくから是非やり方を教えてもらうわ」

「いや、まぁ……良いけど」



どうやら放課後の流れは決まったようである。三人の様子を眺めていた宙は、自分はどうしようかと考えていると、陸也が振り返って口を開いた。



「お前も来るんだろ?」

「ん?」

「んじゃねーよ。ここまできたらお前もやる流れだろ。お前ンちも確かパソコンあっただろ?」

「あるけど、ノートじゃないから持ち出せないんだけど」



だから別に良いよ、と断ろうとしたが、それは聖と涙子によって遮られてしまった。



「パソコンさえあれば家からでも出来るんだ。だから今日はキャラメイクから教えてあげるから君も来なよ」

「折角なら皆でやった方が楽しいわよ」



珍しく押しが強い三人がこうまで言うのなら、きっとそれほどにまで楽しいのだろう。元々、宙には断る理由もなかったので、暫くして「わかったよ」と首を縦に振った。

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