A requiem to give to you
- 何を見ているの(2/2) -



「何を見ているの?」



花の香漂う季節。今、少年のいる場所では辺り一面を桜色に染め上げ、この季節ならではの美しさと儚さを醸し出している。そんな桜舞う公園の真ん中に聳える、若葉をつけた大きな樹を黙って見上げていると、背中からそんな声が聞こえてきた。



「何って……樹だけど」

「それはそうなんだけど……」



そうじゃないわよ、と己の後ろに居る少女は溜め息を吐いた。言葉に困っているのだろう。少年は何となく少女の言いたい事を察すると、口を開いた。



「待ってるんだよ」

「? なにを?」

「大事な人を、な。……約束したから」



だから待ってる。それに……今日は大切な日だから、帰ってきたら言ってやりたい事もあるんだ。少年はそう言うと、もう一度大きな樹を見上げた。

少女はそんな彼の言葉に携帯に表示されている今日の日付を見た。そして納得した。確かに今日は大切な日だ。自分も彼の言う"大切な人"とやらに渡す物を用意している。一体、その人は今どこで何をしているのかはわからないが、少年の言葉からするに何れはこの場所に帰ってくるのだろう。

しかしそれでもやっぱり待ち遠しい、と言いたげな表情で、どこか落ち着かない少年の様子に、少女はそれ以上何も言わずただ彼の隣で苦笑を浮かべた。












To be continued...?
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