A requiem to give to you
- It is vague and is opaque(2/5) -


前々から聞いていたからわかってはいた。頭の中でもその単語の意味は理解はしているつもりだった。でも、だからと言って別に自分には関係はない。いつもと変わりはないんだと、そう思っていた。……でも、自分がそう思っていられたのは、あまりにも二人が"ソレらしく"見えなかったからなのかも知れない。だから実際に二人が"ソレらしく"身を寄せ合ったり、手を繋いだり、普段皆でいる時には見せないような表情【カオ】をしているのを見ると、途端に疎外感が生まれる。自分にとって彼女は書類上では使用人であるが、所詮はただの友達に過ぎないし、彼女にとってもそうだろう。況してや彼女の隣にいる奴に比べたら、一緒にいる期間だって二年やそこらだ。それなのに……



「…………何なんだよ」



どうにも気分が悪かった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







一行は急ぎ足で障気の噴き出ていたフーブラス川を抜けた。しかしルークは彼の希望とは言え、まだ暫く居ると言って残ったグレイとタリスの事が気になり、呼び止める仲間の声を振り切って、再び川のせせらぎが響く森へと戻ってきたのだった。

いつまた障気が出て来るかわからない。そんな場所にいつまでも彼女達を残して置きたくなくて、心配で……ただ一心に二人の元に向かった。暫く走って二人を見つけた時も、そのまま行って文句の一つでも言ってやろうかと思った。しかし二人の様子を見て、彼は足を止めたのだった。



「……………!」



グレイが、タリスを思い切り抱き締めていたのだ。強く強く、けれどとても愛おしそうに、何かに縋るかのように。普段どこか淡白な彼の姿しか知らないルークにとって、これ程衝撃的な事などそうそうなかった。

彼がルーク達の旅について来るようになってから数週間あまりになる。その中で二人があの様な姿を見せる事はなかった。もしかしたら、誰もいない時などに二人だけでいるのかなんて思ったりもしたけれど、以前グレイ本人から聞いた彼女との関係を聞く限りでは、そう言った事も特にないように思えた。
















その事に、何故か安心している自分がいた。何故か、なんてわからない。でもそうでなければ、今頃あの二人の姿を見てこんな草影に隠れて気配を消してなどいないだろう。だって、だって何だかそれは……



「裏切られた気分だから?」

「……ああ、そうかも知れ………────っ!?」



思わず頷きかけて、ルークは途端に背筋の凍るような感じがして思わず声のした方向を見た。するとそこには今の自分と同じように草影に隠れながらタリス達を見ていた紅色がいた。



「なっ―――!?」



驚きに叫びそうになり、直ぐ様その口を彼女の手で塞がれた。



「シー。大声出すとバレちゃうぞ」



口元に人差し指を当てながら言われた言葉にルークはハッとして言葉を呑み込み、声を潜めて隣にいる紅ことレジウィーダに問い掛けた。



「お前、何でここにいるんだよっ」

「君がここに来たから追いかけて来たに決まってるだろー」

「べ、別に追い掛けてこいなんて言ってぬぇっての」



そう言ってルークはレジウィーダから顔を逸らしたが、かと言って前を見ていたくもなくて俯いた。


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