A requiem to give to you
- れっつ★ぱーてぃ?(2/4) -


高い城、底の深い街。ここはお馴染みキムラスカ・ランバルディア王国王都、バチカル。そこの一番高い所に位置するは国王のおわすバチカル城。

今、城のある一室ではまさに地獄のぱーてぃが開かれようとしていた。



『………………』



現在、王女に呼ばれし三人の勇者達は無言で目の前の物体を凝視していた。



「……なぁ、」



最初にこの無言の空間を破ったのは勇者1のルーク【Lv.5】だった。勇者1のルークは謎の物体(……仮にデモンズ・メルトと名付けよう)を挟んで向こう側で自信満々に微笑む王女ナタリア【Lv.68】に向かって勇敢に物申した。



「コレ、…………何だ?」

「ヨウカンですわ」

「え、妖怪ですか?」



バキッ、と言う音と共に椅子ごと後ろにひっくり返ったのは見事なまでに聞き間違えた勇者2のガイ【Lv.7】だった。その口にはデモンズ・メルト【Lv.9999】の一部が嵌め込まれていた。



《勇者2のガイは白目を剥いて死亡した》



王女ナタリアはそんな哀れな勇者に目も暮れず、可愛らしく憤慨した。



「妖怪ではなく、羊羹ですわよ。よ・う・か・ん・!」

「何だよ。その羊羹って」



つーか、コレ食えるのか。その言葉は流石に呑み込んだ。勇者と言えど、命は惜しい。しかし羊羹と言う聞き慣れぬその単語に興味があるのか、未だに黙りこくっている勇者3のヒース【Lv.1】に説明を求めた。



「……羊羹は、小豆などを元にした餡を寒天で固めた和菓子だ。僕やタリスのいた国、日本ではかなり歴史あるお菓子としてお年寄りを中心に愛されてるらしい」

「ヘ、ヘェ………んで、実際の羊羹ってのはこんな感じなのか?」



淡々と機械的に述べた勇者3のヒースの言葉に納得しつつも再度問うと、彼はゆるゆると首を横に振った。



「だ、だよなぁ……」



固めたって言ってたもんな、と苦笑いを浮かべれば、王女ナタリアの眉間にみるみると皺が寄せられた。



「まぁ、なんですの二人とも! わたくしが折角タリスに教わって作りましたのに」



やっぱりあいつか。勇者二人の心が通じ合った瞬間だった。



「それにヒースは見た目に似合わず甘い物が好きだと聞きましたわ」

「……一言余計です」

「だからわたくし、久々に腕を奮いましたのよ。───ほら、こんなに沢山ありますわ!」



そう言って次々とテーブルの上にデモンズ・メルト【Lv.9999】が置かれていった。己の血の気が引いていくのが嫌でもわかった。しかし王女ナタリアはそれに気付くことなく、嬉々として手を合わせてとんでもない事を提案したのだった。



「そうですわ! どうせならパーティを開きましょう!」

「「は?」」



あまりに唐突過ぎる発言に二人は呆然と王女を見つめ返す。



「流石に大それた事は出来ませんが、フィーナやタリスも呼んで小さな羊羹パーティをやりましょう!」

「ちょ、ちょっと待てよ!!」



意気揚々と話を進める王女ナタリアに勇者1のルークは慌てて止めた。



(……と言うか、羊羹パーティとはなんぞや)



デモンズ★ぱーてぃの間違いだろう、と勇者3のヒースは思わずには要られなかった。






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







それから暫くして勇者1のルークの頑張りも空しく、天然王女ナタリアの策略によってデモンズ★ぱー………羊羹パーティを開く事になった。



「失礼いたしま……………あらあらまぁ……」



礼儀正しくゆっくりと扉を開けて入って来たメイドのフィーナ【Lv.14】はテーブルの上の惨状に目を瞬かせた。


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