A requiem to give to you
- なぜでしょう?(2/3) -



「何故………なのかしら?」



外交で忙しかったナタリアが久しぶりに遊びに来て、いつものようにルークとお決まりのやり取りする。結局最後にはルークがどこかに隠れてしまい、ガイとヒースも彼を捜しに行った為いなくなってしまった。仕方なく彼らを抜きでナタリアは持ってきたお土産のお菓子を広げてタリスとお茶始める。

それから間もなくの事だった。タリスが珍しく神妙な顔付きでそう言ったのは。



「一体、どうしましたの?」



ナタリアはそんな彼女の様子に心配そうに問い掛けた。タリスはどうしようかと一瞬躊躇った後、怖ず怖ずと声を潜めて言った。



「実は…………生理が、来ないの」



女性なら思春期以降は誰でも訪れる大切な生理機能である、月経。タリス達がこの世界に来てから半年程経つが、一度も来ていないのだ。最初は環境の変化に慣れないだけなのかと思った。しかし半年(地球の日数計算だと約一年)もの間、全く来ないと言うのはいくら何でも異常だった。

一通りナタリアにその事を説明(勿論世界を超えて来た事は省いた)すると、途端に彼女は驚いた様に目を見開いた。



「タリス、それはもしかして………妊娠したのではなくて?」

「ぶっ」



紅茶を口にしていたタリスは勢い良く噴き出した。そして直ぐに慌ててハンカチで口元を拭いてカップを置くと、引き吊った表情でいきなりとんでもない事を言い出したナタリアを見た。



「誰が……何ですって?」

「ですから、妊娠ですわ!」

「……………」






*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇







「なぁ、生理って何だ?」



物陰から二人をこっそりと窺っていたルークは不思議そうに首を傾げながらそう言うと、物凄く後悔した様子で頭を押さえるガイを見た。



「生理ってのはなぁ……なんつーか、」

「別名、月経と言って女性だけに起こり得る特別な現象だ」



回答に困るガイの代わりに淡々と答えたのはヒースだった。彼は特に話を聞いてしまった事への罪悪感はないようだったが、どことなく興味を示しているようだった。一方、ヒースの説明に納得が行ったのか行かないのかわからないルークは取り敢えず「へぇ」とだけ返して再び二人の話に聞き耳を立てようとしていた。

それにガイが止めに入る。



「なぁ、止めないか? これ、俺達が聞いて良いような話じゃないって……」



ガイがそう言った時だった。



「タリス、それはもしかして………妊娠したのではなくて?」

「「!!?」」

「……………」



ナタリアから爆弾が投下されたのだった。



「な………え、え??」

「は、………お? は!?」

「二人とも、少し落ち着いて」



大混乱するルークとガイに意外にも冷静なヒースが肩を叩いて落ち着かせる。しかしルークはそれを振り解くと猛ダッシュで二人の所へ向かって行った。



「タリス!!」

「「ルーク!?」」



彼の登場に二人は驚くが、ルークは気にせず目を白黒させているタリスに言った。



「タリス、に……にに妊娠って……アレか? あ、赤ちゃん!?」

「きききみは、い、いつ……そんな事に……まさか、本当に!?」



後から出てきたガイまでそんな事を言い出し、タリスは疲れたように溜め息を吐くと首を横に振った。


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