A requiem to give to you
- 迷宮の教会・ダアト(2/4) -



朝の静かなダアトの教会。聖堂でさえまだ参拝者も少ない今の時間帯は、内部の部屋や廊下などはたまに兵士や祭司が通る程度なものだった。

たくさんの階段、たくさんの扉、そして…………幾道にも分かれている長い廊下。レジウィーダは只ひたすら目的の人物を探す為に忙しなく走り続けた。
























………が、




























「迷った!」



お約束である。



「ってか、何っなんだよここはー!?」



図書館を飛び出して早数十分。仕舞いには廊下のど真ん中で両手を突き上げて叫び出した。



「行けども行けども同じ光景。……かとも思えば開ける部屋ん中は全然違うし!」



開けた見た部屋の中には私室や客室、更衣室など様々だった。中には大浴場に繋がる場所まであり、うっかりこれまたベタな事まで仕出かした(これは流石の彼女も申し訳ないと思った)



「うー……ここは一体どの辺なんだ?」



一旦戻りたくても後ろはやはり同じ光景で、自分がどうやってここまで来たのか、その道筋すらもわからなくする。レジウィーダは己の浅はかさを呪った。



「あーもう、これなら誰かにちゃんとあの人の居場所を聞いておくんだった」



……とは言うものの、図書館での事で感情が高ぶったまま只突っ走っていたその時のレジウィーダには、とてもそんな余裕はなかった。彼女自身の中での色々な葛藤、思考の交錯が早く真実を知りたいと己を急かしていた。レジウィーダは性格上、そんな猪突猛進な所がある。それは時には長所にもなるが、大抵は行動が裏目に出がちなのが問題だ。



「はぁ、誰か親切な人とかが現れて入口まで連れて行ってくれないかなー」



それからも何だかんだで結局数時間と彷徨い続け、そろそろウンザリし始めた頃。丁度目の前の扉が開いた。



「………!!?」



少年だった。彼は部屋から出るなりレジウィーダの姿を見ては驚いた……いや、寧ろ驚愕したと言った感じで目を見開いて彼女を凝視した。そんな少年の視線を疑問に思いながらもレジウィーダは助かったとばかりに話し掛けた。



「うわー、君! すっごくグッドタイミングだよ! いきなりで悪いんだけどさ、あたしを教会の入口まで連れて行っt……」



全てを言い切る前に小気味の良い音と共に彼女の首には少年のラリアットが決まっていた。悲鳴や文句を言う間もなく少年が元いた部屋に連れ込まれ、そのまま床に叩き付けられた。



「うぐっ……つー……いきなり何を」



諸に打ち付けた背中から伝う痛みに顔を歪めながらも問うと、少年は殺気を込めた瞳で見返してきた。



「テメェ……何者だ?」

「何者って言われても、それ以前に何この仕打ち。酷くない?」



アンタは初めて会った人間(しかも女)にラリアット喰らわせて部屋に連れ込むんかいな、と返すと「うるせぇ!」と怒鳴られた。



「俺の質問に答えやがれ! お前……


















キムラスカ王家の者か!?」























ワン モア プリーズ?

いきなり言われた突拍子もない問いに思わずレジウィーダは目を点にしてそう返してしまった。



「えーと、誰がどこの王家の者だって?」

「惚けんじゃねぇ! その紅い髪はキムラスカ王家の特有の物。それにその服も、まんまキムラスカ軍独自の色じゃねぇか!!」



どうやら彼が殺気立っている原因はそこにあるようだった。


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