「禁酒、禁煙。開店中は守れ、と言わなかったかな。」

「じゃ、今日はもう閉店だ!じゃんじゃん騒ごうぜ!?」

「か、勝手に決めな」

「良いよ、閉店にしようか。」

「マスター!?」

「問題無いんじゃないかい?客が来るとも思えないし。」

「お前が言うな!!」

「さあ、閉店準備。」

「飲んで飲んで飲みまくるぞ!!」

「聞けよ!」


人の話を全く聞かない二人が手を組んだ!

こうなったら止めるなんて不可能。諦めるしかない。


「……この営業妨害コンビ…。」


頭が痛い。アリーさんが来るとどうしてこんなに頭が痛くなるのか。

訳の分からない(分かりたくない)頭痛を気合いで押さえて閉店準備に取り掛かる。


「すみません。ちょっと良いですか?」

「……何か?」


挨拶以外一切口を開かなかった弟(ノスト、だった)が作業中の私に声を掛けてきた。
ちなみに話を聞かない二人組は見向きもしない。……少しは手伝おうとか思えよ。


「あまり待たせないで下さいね。手際良くお願いします。」

「なら手伝っ──ってもう聞いてない!」


あの姉にしてこの弟有り…!
言いたい事だけ言って後はスルー。

私の声なんて最初から存在しないと言わんばかりに無視してる。
手伝う気も起きないのか。いつも一人で片付けているとは言え、こればかりは腹が立つ。


「やっぱここで飲む酒は格別だよなぁ。」

「どこで飲んでも味は変わらないよ。」

「まぁ堅い事言うなよ。な?」

「わ、私?」

「すみません、まさかお酒しか出さないつもりですか?姉ちゃん、何が食べたい物があればどうぞ。」

「じゃあピザ!」

「昼間っから閉店させて酒飲む奴らが偉そうに言うな!」


あーもう開店中より忙しい!
何でこんな得にならない事やってんだか。

仕方ないので昼食用に取っておいたサンドイッチを用意する。


「はい、これで我慢して下さいね。」

「イギリスではこれをピザと呼ぶんですね。僕はサンドイッチだと思い込んでました。」

「イギリスでもサンドイッチと呼びますよ。」

「言語の違いって不思議です。」

「この…!」

「ノスト、これ美味いぜ。食わないのか?」

「うん、相変わらず悪くないね。」

「あ、ちょっと!それ姉ちゃんのですよ!?」

「元々私のだ!!」


マイペースなのが三人も居ると腹が立つ。……と言うか疲れる。
私を疲れさせるのはマスター一人で十分。


「アリー、今日は泊まっていくんだろ?」

「えっ?」

「ああ、こっちじゃ宿なんか取れねぇからな。」


ノストと呼ばれた少年が狼狽えるのを余所に話は進んでいく。
……知らなかったんだ。で、泊まる気なんだ。

まあ、彼女の言葉にも一理ある。私は詳しく知らないが何年か前(2年くらい?)にある男が大それた事をやらかして以降イギリスでは人間を排除しようとする動きが見られる。
むしろそんな国にやってくるアリーさんが珍しいのだ。

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