結婚なんて縛られるだけ


「暇だな〜。」


その言葉が背後から聞こえた瞬間、背中に氷を滑らせたような悪寒が走った。
我らが鷹乃様が何か恐ろしい事をしようとしている。


「なぁ、猿吉。」


ほら来た。俺の悪い予感だけは外れない。


「次の授業担当にプロポーズする気無い?」

「はっ!?えっ、俺!?」


“プロポーズ”

この言葉で俺の単純なゲージがすぐに溜まって顔が熱くなる。


「鷹乃、和でからかうなって。」

「残念だったな、本気だ。」

「尚更悪いわ!!」


なんて会話に割り込む勇気が出てこない。
いや、プロポーズ?俺が?誰に?学生ですが?


……お次の先生に?


「タンマタンマ、鷹乃様!先生相手じゃ年齢差あり過ぎだって!俺熟女好きに見えてんの!?」

「だ・れ・が、熟女だって〜?」


その瞬間。間違いなく心臓が止まったと思う。

後ろを向いて抗議している俺の背後から関節を鳴らす音が聞こえる。
と、同時に恐るべき殺気を漂わせたハスキーボイスが聞こえた。

ホラー映画を見終わったような気分で振り返ったらそこに居たのは話題の御方。
さっきまで赤かった顔が一気に青ざめるのを感じる。


「赤石。」

「は、はいっ!!」

「一つだけ言っておく。私はまだ27だッ!!」


胸ぐらを掴まれ僅かに椅子から浮く。
ライオンに捕まったシマウマってこんな気分?


「赤石、お前廊下に立て。」

「ええーっ!?」

「あ゛ぁ?」

「ごめんなさい、立ちます。」


本格的に殺される。俺の本能が告げてるから分かるんです!


逆らったら後が怖いのでとぼとぼと出ていく。
途中で郁からの同情の眼差しや鷹乃様の嬉しそうな(理由は想像したくない)視線を向けられた。

ちなみにクラスの皆は見て見ぬ振り。





「お前アレわざと?」

「なぁに言ってんだよ郁美ちゃん。偶然で片付ける訳無いだろ?」

「お前のえげつなさを見た!」

「お前にも相手を探してやろうか?そうだな〜…。」

「良い!」

「お願いします?」

「何でー!?」

「瀬戸川ァッ!!」


なんて会話が交わされてた事を知る由も無かった。

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