ここは叶え屋双子が住む一軒家。 居間の中心に置かれたコタツ、その中心に置いてあるのは大量のちくわなどである。 「つまりはそういう訳。」 「いや、分かんねーよ。」 「そう言いっこ無しにしようぜ兄弟♪」 「誰が兄弟だ!つーかお前の兄弟あっちの女だろ!?」 双子の他に見覚えの無い人物も混じっているようだ。 コタツを囲んで座っているのは登奈から時計回りに那奈登・ディセル・エンジェである。 二人のゲストは無理矢理連れてこられたのか未だ状況が掴めず混乱しているようだが。 「ね、ねぇ……ディセル。僕達……どうなっちゃうのぉ?」 取って食べられるとでも思ったのかすっかり怯えているエンジェ。展開が急だよね、ごめん。 「細かい事は無し。とにかく食べて騒いで以下略!」 「以下略じゃ……伝わらないよ?」 「そこはテレパシーで分かってくれるだろ☆」 「む、無理じゃないかな。」 だよね、登奈。那奈登のツッコミは君だけだ。 「とにかく今日はめでたい日らしいんだよねー。詳しい話は後で。食え、手羽先共!」 「誰が手羽先だー!」 「エ、エンジェ君……だよね?ちくわ、食べる?」 「良いの?……あ、ありがとう。」 那奈登の言葉に律儀にツッコミを入れるディセル、気弱同士気が合うのかちくわを分け合う登奈とエンジェ。 「ぜーんぶ食えよ?俺と登奈はあちこちのスーパー行って賞味期限が今日までの集めたんだから。」 「言われなくても平らげてやるよ!性悪になんか一本も渡さねぇ!」 「な、那奈登…。悪魔に性悪呼ばわりされるなんて…。」 「ねぇ…。ショーミキゲンってなぁに?」 「え、えっと……食べられる期間、かな。」 純粋な天使に大人の事情を説明するのは難しいよね。 『賞味期限が近い物は2割とか半額とかで安い』なんて大人の事情を伝えるのは心苦しいよね。 「ディセルく〜ん♪これ食べない?」 「うわっ、女みてぇな声出してんじゃねーよ!」 夢中でちくわに食らい付くディセルに擦り寄る那奈登。その手には皿に並べられたちくわが乗っている。 態度が女の子verになっているぞ、那奈登よ。 「食べないのぉ?」 「食う!」 気持ち悪いだの言いながらもちくわは食べたいらしい。 「あ〜んってしてあげよっか?」 「いらねーよ!男にされたって嬉しかねぇ!」 「登奈ちゃーん、お呼びよ〜♪」 「違ーう!!」 悪魔をも遊ぶ那奈登。悪魔vs悪魔みたいな弟。 「じょーだん♪ほら、やるよ。」 「……っ、ドゥワアアアアアア!!」 「あはははっ!!刻んだキムチをコチュジャンで和えてんの、みっちり詰めてっからな〜。」 さすがは辛党。『容赦』の二文字が存在しないようだ。 床を叩きながらもがき苦しむディセルが哀れとしか言い様が無い。 [*前] | [次#] |