「あなたの子どもを産ませてください」

 その日、いつものように自宅へと帰り着いたグラハムを迎えたのは、玄関先で三つ指を突くなまえだった。
 あまりに予想外の出来事に沈黙すること数瞬――ようやくそれの意味する所を理解した時、グラハムはただ、やられた、と、そう思った。

「……なんと。よもや先を越されてしまうとは……」

 苦笑混じりに呟いて、視線を合わせるようになまえの目前に跪く。そうしてグラハムが今日この日の為に用意したそれを差し出せば、顔を上げたなまえは数度ぱたぱたと瞳を瞬いて。

「なんだ、結局考えてることは一緒だったの」
「ああ、そのようだ」

 リシアンサスとムーンダストの青い花束。いつか好きだと言っていたその花を抱えてなまえが微笑む。
 こうなってしまっては勿体ぶる意味もなく、笑みを返すグラハムは、次いでもうひとつのプレゼントを取り出す。どうにも締まらないが、――これはこれで、悪くない。

「結婚しよう、なまえ」



Happy marriage!
word request:「あなたの子どもを産ませてください」
20120120

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