真っ黒の髪、真っ黒の瞳。まるで暗闇をぶち撒けたようなわたしの姿を、造り物のわたしの姿を、彼女は美しいと言った。羨ましいと笑った。
 それが全てのはじまり。たったそれだけの些細な出来事が、今この瞬間も、じわじわと少しずつわたしを蝕む原点。

「……フェルト、」
「なまえ? 顔色が悪いよ、どうかした?」
「大丈夫、何でもないの。何でもない、けど……」

 その小さな身体をそっと抱きしめる。戸惑うように身じろぐ彼女。けれど、わたしのただならぬ様子を察してか、やがて、遠慮がちに背中に細い腕が回される。
 心臓が軋むような、肺が締め付けられるような感覚。どうしてわたしはニンゲンではないの。吐き気がする。彼女と同じもので在りたかった途方もない程の時間なんて要らないから脳量子波だって扱えなくて良いから、だから。

(……    、)


 他の何もかもを差し出して構わないから、貴女を愛する資格を下さい。



生きた履歴を消せれたらどれだけ楽だろう
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20111231

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