※ヒロイン=吸血鬼 「なまえ」 陽が落ちて辺りが薄暗くなり始める頃――逢魔ヶ時。わたしがもぞもぞと起き出すそのタイミングを見計らって、何故だかいつも、刹那はわたしのねぐらへとやってくる。 「顔色が悪いな。食事は、」 「はいはい、摂ってませんよ。君がニンゲンを襲うなって煩いからね」 「だが、それではお前が保たないだろう」 「先に言っておくけど、絶対に嫌だよ。君の血は吸わない」 そして、わたしと刹那がここですることと言えば、毎度大した代わり映えもない言葉の応酬ばかり。今日も今日とて、わたしは「何故だ」と疑問を呈す刹那にプイと背を向けて強制的に会話を打ち切る。 答えられる筈がなかった。だってわたしは吸血鬼だ。こんな風に少女のような外見をしていたって、刹那たちニンゲンとは、根本から何もかもが決定的に違っている。 それは例えば寿命。現時点でだってわたしは刹那の何倍も長い年月を過ごしてきているし、これからも過ごしていくことになるだろう。わたしが刹那と共有できる時間は、その中のほんの一握り。だから。 (わたしには多分、『食事のために』刹那の血を吸うことなんてできない。きっと、君をわたしの『眷属』に造り替えてしまう) (だからね、これでいいの) 真紅色の恋心 title request:『真紅色の恋心』 20111224 |