「上級大尉、」

 少し顔色が悪い気がしたから、もしかしてと思ったわたしは自らの口元を指差して首を傾げてみせる。それは鎌を掛けたつもりだったのだけれど、実際、わたしの予想は当たっていたらしい。口元に手をやるようなわかりやすいリアクションはなかったものの、確かに、そのひとは驚いたように表情を動かした。

「……なまえ、やはり君には敵わないな」
「やっぱり。血でも吐かれたんですね」

 わたしは思わず盛大な溜息を吐き出す。方々に口止めして隠しているつもりだったらしい。少し考えればすぐにわかることなのに。
 それにしても、先程の戦闘でこのひとは十分すぎる結果を出した。このひとの好みそうな言い方をするならば、その働きはそれこそ阿修羅の如く。けれどそのために、随分な無茶をしてくれたものだ。

「メディカルルームには行かれましたか? もしもまだだと仰るなら早急に」
「心配には及ばん。私は君が思っているよりずっと頑丈にでき」
「わかりましたから、お早く」


(どんな無茶すらも全て愛しいだなんて、)(……嗚呼、報われないわ)



君の吐瀉物まで愛してる
20110314

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