「おかえり、アニュー」
「……なまえ。ええ、ただいま」
「……? 元気ないね。帰ってきたの、うれしくない?」
「そんなことないわ。またこうやってなまえに会えて嬉しい」

 そう言ってアニューは優しく笑って、わたしを抱きしめてくれた。その言葉だって、きっと本心の内には違いない(というか、そう思いたい)。
 それなのに、どうしようもなくアニューの心は晴れきらない。
 ああ――やっぱり無理にでもわたしもついて行けばよかったんだ。アニューをひとりになんかするんじゃなかった。とは言っても、こうなってしまっては全ては後の祭りに過ぎないのだけど。
 だから、今からわたしにできることと言えば、その原因を打ち砕くことだけだった。


(大丈夫だよ、アニュー。もう何も悲しいことなんてなくなるから)



手を伸ばした愚か者
20110316

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