なまえはDr.モレノの助手をしている。しかし如何せん彼女は気が弱かった。血を見れば悲鳴を上げそうになるか卒倒しそうになるかのどちらかで、その様子は、逆に患者の側が大丈夫かと訊きたくなる程だった。
 けれど、よくよく考えてみれば、実際になまえが悲鳴を上げたり卒倒したりしているところは見たことがない。いつだってなまえは直前で悲鳴を飲み下し、意識を繋ぎ止め、「大丈夫」と笑ってみせる。
 それが患者を落ち着かせるための言葉なのか、彼女自身に言い聞かせている言葉なのかはわからない。しかし、どちらにしたって「大丈夫」でないのは明らかだ。それなのに、彼女のそれには縋り付きたくなる何かがあった。勿論、年下の女の子に寄りかかることを良しとするような低いプライドは持ち合わせていないが、それでも。



その嘘が好きだった
20110316

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