隣で身動きする気配と、小さく衣擦れの音がして意識が浮上する。思った通り、隣では半身を起こしたなまえが所在なさそうにうつむいていた。 「なまえ、」 「眠れないの」 名前を呼べば、真夜中の静寂の中でさえ聞き逃してしまいそうに小さな声が返される。何故、と喉元まで出かかった疑問は即座に飲み下した。聞いてほしければ自分から話すだろうし、もしかしたらなまえ自身理由がわからないのかもしれないと思ったからだ。 「横になって目を閉じるだけでもいい。ほら、おいで」 代わりに、布団の中に引きずり込んで抱きしめる。ひどく華奢なその身体は、既に冷たくなり始めていた。 「冷たいな」 「……ごめんなさい。起こしてしまった上に、こんな、」 「いや、君の不安に気付けないことの方が、私にとっては余程苦痛だよ」 なまえの声は、変わらず細かった。伏せられた瞼を縁取る長い睫毛も微かに震えている。 こうして抱きしめることが、彼女にとって一体どれほどの意味を持つのだろうか。こと彼女に限っては、自信を持てない自分が情けない。「グラハムさん、?」。それでも、少しでも何かが伝わるように、なまえの丸い額に唇を寄せた。 「大丈夫だ、なまえ。私は君の傍にいる」 (おやすみなさい、よいゆめを) 星たちが眠っている間に 20110315 |