※暗い


 刹那・F・セイエイという人間は、全く以て予想もつかない人物だとわたしは思う。最近で言えば、そう――敵のパイロットに、あろうことか自分から、その姿を晒しただとか。しかもその理由については黙秘しているらしい。全く、何を考えているのやら。
 なんて、コンテナに併設されたレストルームでそんな益体もないことを考えていると、偶然にも刹那がやってきた。

「エクシアの整備、終わってるからね」
「ああ」
「あ、そうだ。銃の手入れもちゃんとやってる? 今なら手が空いてるし、わたしがやっておこうか」
「すまない、頼む」

 わたしは刹那から銃を受け取ると、即座にセーフティを外して適当に引き金を引く。けれど銃声は響かない。代わりに、何かが床を打つ乾いた音が静寂をかき乱した。
 わたしはじくじくと痛む手首を軽く振って具合を確かめる。引き金を引く直前、刹那に銃を叩き落とされたのだ。そして、当の刹那はと言えば、いつも通り感情の読めない表情で、わたしをただ見つめていた。

「……もう十分でしょ? ねえ、刹那。わたしはもう嫌。もう戦わせたくなんかないの。あなたが生きている限り戦い続けると言うのなら、わたしはあなたの息の根を止めてでもそれを終わらせる」

 刹那がガンダムに執心しているように、わたしは刹那に執心している。
 今までは、どうにかその感情を抑えつけてできる限り前向きに捉えてきたものの、やはり、それはどうしようもなく昏く歪んでしまっているらしい。後先も何も考えず、引き金を引いてしまえるくらいには。

「だから、もう全ておしまいにしましょう、刹那」



笑顔のバッドエンド
20110315

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