ああ、まずい。ティエリアとはぐれた。一刻も早く合流しないとまた怒られる……!
 そんな風に戦々恐々としながらティエリアを探し歩いていると、「なまえ?」。名前を呼ばれて反射的に振り返った先には、紫色の髪で赤い瞳で、ティエリアと同じ顔をした別の誰か。
 だって、ティエリアの髪はあの生真面目な性格を反映したようなド直毛で、こんな風にふわふわ踊り狂ってはいないし、愛想だってよくないし、そもそも声が違う。けれどこのひとはわたしの名前を知ってるみたいだし――とか、毎日のようにティエリアに足りないと罵られている頭で、咄嗟にぐるぐる考える。えーと、つまり、ティエリアの知り合い?
 「あ、」「なまえ!」。とりあえず目の前の人物とコンタクトを試みようとするわたしの声を遮って、聞き慣れた声がわたしを呼んだ。今度こそティエリアだ。
 けれど、早速怒られるかなあ、なんて身構えるわたしの予想に反して、その様子はひどく取り乱しているように見える。それに対して、ティエリアのそっくりさんはひどく愉快そうに笑っていて、それがなんとなく印象的だった。

「このひと、ティエリアの知り合い?」



春はまだ終わったことに気づかない
20110315

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