※2nd。おかえりなさい、せっちゃん!


 ミレイナからせっちゃんが帰ってきたと聞いた丁度その後、わたしは廊下でばったりとせっちゃんに出くわした。

「あっ、せっちゃん久しぶり!」

 挨拶代わりに体当たりして、がばりと抱きつく。確か、初めて対面したときも同じことをした筈だ。そのときのせっちゃんの反応は、「俺に触れるな!」。けれど、そんな風に言われると俄然やりたくなるのがわたしという人間なのである。
 以来、わたしはせっちゃんを見れば所構わず抱きつきまくり、その度に振り払われ、遂にはせっちゃんがわたしを見ると逃げるようになり、逃げられると追いかけたくなるわたしは待ち伏せやら何やらとにかく全力を尽くしてせっちゃんを追いかけ回し――最終的には、見かねたロックオンに叱られたところでやめた。懐かしいなあ。
 それにしても、うーん。遠目に見た感じからもそんな気はしていたけれど、やっぱり、随分とせっちゃんの背が伸びている。以前は抱きしめるって感じだったのが、今ではぶら下がるって感じだ。なんとなく悔しくなって、わたしはせっちゃんから身体を離した。

「……縮んだんじゃないか」
「失礼な!」

 奇しくも、せっちゃんもわたしと同じ違和感について思いを巡らせていたらしい。ただし、その着地点はとんでもなく失礼だった。

「そんなこと言ってるとまた追いかけ回すからね! べたべたするからね!」
「お前は成長しないな」
「うわ、バカにされた!」

 あれっそもそもせっちゃんってこんな子だったっけ。え、なに、もしかして散々追いかけ回したこと根にもたれてるの? ……ん。でも、その割にさっき抱きついたときは何も言われなかった、よう、な(!)。
 「とあー!」。ものは試しと、もう一度せっちゃんにダイブしてみる。すると、「何がしたいんだ……」。せっちゃんは呆れたような声で言った。やっぱり前みたいには嫌がられない。「え? いや、俺に触れるな! って言われないし、折角だからいっぱい触っとこうと思って」。正直に言ったら溜息を吐かれた。わたしは笑った。
 背が伸びて大人っぽくなって、雰囲気も、わたしへの対応の仕方だって変わってしまって、それでも、やっぱりせっちゃんはせっちゃんだって、なんとなく、直感的にそう思った。

「でも、よかった。元気そうで。……おかえり、せっちゃん」
「ああ、」


(ただいま)



あなたを独り占めできるその 瞬間
title:選択式御題
20110209
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