師走の下旬、年末年始に向けて人々が大忙しに横切る中、学校の生徒会の用事で制服姿な私と顧問の土方先生は珍しく歩いていた
珍しい、とは、土方先生と言えばタバコを片手に車だからである
そんな土方先生の車の行方を聞けば、間が悪そうに「あー…総司の奴が悪戯しやがってなぁ…」と恨めしそうな面もちで語っていたので大体の想像は出来た
だけど私は、その話を聞いて内心踊れるくらいに嬉しかったのは秘密
(だって、その方が帰る時間が長くなるし…)
「…寒いですね」
はぁっと指先が赤く悴んだ両手を息にかける
「ああ…そうだな…もう雪が積もってるからな、気温も下がるだろ」
土方先生も寒そうで両手をスーツのポケットの中に忍ばせている
ちょっと伸ばせば届く距離でもスーツのポケットの中では手を繋ぐことも儘ならない
千鶴は少し自分の片手を見て、名残惜しそうに悴んだ両手を擦りあわせる
「先生…寒いのは分かりますが両手をポケットに突っ込んで歩いたら危ないですよ」
と何か悔しいと思った千鶴が言えば土方は千鶴の方を向くなり、にやり、と薄笑いし
「ホントお前は可愛い奴だなぁ、ほら今日は特別な」
そういってスーツのポケットから手を出して千鶴の冷えた手を掴む
土方の手は温かくて、いつもの冷たい手が嘘のよう
「なっ…別に、そんなつもりで言ったんじゃ…!」
千鶴は頬を染めて土方の温かい指に自分の冷たい指を絡ませ握る
「俺が寒くてもポケットから手ぇ出してやんのは、お前にだけぐらいだよ」
世間話の様に、ははっ、と笑う土方の横で千鶴は、こんなタイミングでそんなこと言うなんて狡いです、と、か細い小さな声で呟いた


素直じゃなくて、ごめんね
(少しだけ意地張って背伸びする私を許して)



 


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